Let’s go o-henroad! 「お遍路ードプロジェクト」について

98日目「発心の道場と言われる阿波遍路の意味を考えた」(2015年10月20日)

歩数 20612歩
距離 12.3km
消費カロリー 579kcal

 10月のお遍路で初めて徳島県に足を踏み入れた。すでに高知の半分、愛媛の全部、讃岐の全部、計58か所の札所を打ち終えている我々にとって徳島は「続きの始まりの地」でしかない。しかし、大方の歩き遍路たちは1番札所の霊山寺(りょうぜんじ)からお遍路をスタートするわけだから、まさに「始まりの地」である。
 鳴門市大麻の1番霊山寺から海部郡美波町の23番薬王寺まで。徳島県(阿波の国)の23か所の霊場をめぐるお遍路は「発心(ほっしん)の道場」と呼ばれる。発心とは「発菩提心」の意味で、悟りを求め仏道修行を行おうと決意すること(四国霊場会のホームページによる)とある。
 しかしこの説明だとプロのお坊さんになるわけではない一般の人々には通用しない。
「何だか面白そうだから」「人生の節目の記念になるから」「体に良さそうだから」「ヒマだから」「普通の観光にはもう飽きたから」などなど、仏教にも宗教にも悟りにも関係ない動機でお遍路を始める人々がいる。そういう人たちも排除せずに「徳島はお遍路をやってみませんかと誘う場所」と考えるのが現代的な解釈だと黒ちゃんは思う。
 そして5日間で12の寺をたどった今回の遍路旅で、徳島が確かに「発心の道場」にふさわしい地であることを実感したのである。

 徳島平野を貫通する吉野川の左岸(下流に向かって)の10番までは2日、早い人では1日で回れる。ここは車でいえばアイドリング。自らの体調と精神を遍路モードにスイッチオンする区間である。
 吉野川を渡り、11番藤井寺から12番の焼山寺に向かう山道に踏み込んで初めてお遍路さんは本格的な歩き遍路の世界がどんなものなのかを知る。13kmにわたるアップダウンの激しい山越えの遍路道の厳しさを突きつけられる。
 ここで「生半可な気持ちで遍路はできない」ことを体で理解する。と同時に、真言密教の寺の質素な佇まい、歩き通した後の達成感、道々の自然の豊かさ、素晴らしい景色、ひなびた山里の風情、多くの人の足によって踏み固められた道の美しさ、などに癒される自分を発見する。
 1番から12番は「歩き遍路ってこんな感じの世界なんですけど、ちょっとやってみない」と誘うのにぴったりな「プチ遍路体験」のコース。まさに「発心の道場」にふさわしい区間であった。

 さて。最終日の今日は、昨日打ち終わった焼山寺の門前から遍路道をたどって神山町阿川(あがわ)までの鮎喰川(あくいがわ)沿いの裏道を通るルートである。峠越えが1か所あるがおおむねくだり道を歩く楽なコースだ。
 秋にしては強い日差しを遍路道沿いのスギやヒノキの梢が心地よい木漏れ日に変えてくれる。歩道も車道も傾斜が緩やかで前日の「へんろころがし1から6」の厳しい山道歩行で傷んだ膝や腰を優しくいたわってくれる。
 同行の竹内記者が「気分一新したくて」霊山寺で購入した金剛杖(こんごうつえ)の鈴の音が後ろから追いかけてくる。彼の一歩一歩に合わせて律儀に鳴るのである。黒ちゃんの靴音と竹内記者の「チリンチリン」が刻むリズムが心地よい。金剛杖に鈴をつけるアイデアを考えたのがお大師さまだとすれば、彼は優秀な音楽プロデューサーでもあったと思う。

 9時に焼山寺の門前をスタート。阿川から徳島駅前行きのバスは1日3本しかない。13時18分発を逃せば次は15時55分。夕方までに今日の原稿を書かないといけない我々は13時18分のバスにどうしても乗りたい。
 遍路地図のコースタイムは焼山寺から阿川までは4時間とある。9時スタートではあんまりノンビリしていられない。なんとなく気が急いて足も速くなっていたのか、それとも鈴の音のリズムのおかげか。意外にも12時過ぎに阿川のバス停に到着してしまった。出発時間まではまだ1時間以上ある。
 多分これはお大師さまからのプレゼントの1時間であろう。停留所のベンチに腰かけてゆっくりとこのたびの遍路を振り返った黒ちゃんでありました。

 竹内記者の金剛杖衝動買いを讃える一句
 <鈴の音は ゆかしき旅の BGM>

 10月も文字量の多いトイレットペーパーのような(縦に異様に長いので)黒ちゃんのお遍路ブログに辛抱強くお付き合いいただきありがとうございました。来月は23日からの1週間を予定しています。「発心の道場」阿波遍路の第2弾にはどんなサプライズが用意されているのでしょうか。ご期待ください。

黒笹慈幾


焼山寺からの下山道で対岸の山を見ると昨日越えてきた山の峠が見えた。稜線がV字形に凹んでいる箇所に遍路道が通っている。


歩き遍路界の大先輩、衛門三郎が死ぬ直前に弘法大師が枕元に現れて生前の悪行を赦したという逸話がある。それに基づいて作られたのが神山町下分にある「杖杉庵」の青銅製の彫像。なかなかリアルな感じである。ここは衛門三郎がお遍路中に行き倒れた場所でもある。


次の札所の13番大日寺への案内。今日はその手前の阿川集落まで歩く。


焼山寺参拝の表玄関、神山町寄井にあるおへんろ駅の大看板。


今日の行程で唯一の峠「玉ケ峠」で小休止。


鮎喰渓谷を見下ろす高台に作られた遍路小屋。1階はトイレ、2階は宿泊スペースのメゾネットタイプの遍路小屋。


遍路小屋のテラスからの眺望が素晴らしい。


収穫したばかりのスダチが無造作に道端に置かれている。スダチは徳島を代表する柑橘だ。


こんなレトロな徳島バスの停留所が、阿川にある。ここから徳島駅行きのバス便は1日3本しかない。


阿川の路地のあちこちに、このような等身大の人形が置かれている。人口減少に悩む神山町が考えたユニークな取り組みだ。


金剛杖のこの鈴が歩くたびにチリリンと鳴く。ひとりで寂しい山中を歩いているときなどにも心強いBGMになる。イノシシ除けに効果があるか?いいや、それは彼らに聞いてみないと。


徳島市内最後の夜遍路で訪ねた両国本町「あらた喰楽部」(088-678-2599)で食べた「ちりめんアンチョビキャベツ」。シャブリとの相性がバツグンです。


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