Let’s go o-henroad! 「お遍路ードプロジェクト」について

97日目「へんろころがし1と6を突破して焼山寺へ」(2015年10月19日)

歩数 25438歩
距離 15.2km
消費カロリー 505kcal

 四国遍路屈指、「へんろころがし」の難所を前にして歩き遍路たちは考える。「できるだけ早く出発、できれば夜が明けたらすぐに歩き始めたい。そうすれば途中多少のアクシデントがあっても余裕を持って焼山寺へたどり着ける」と。
 だから大方の歩き遍路さんは藤井寺の近くの遍路宿に前泊する。しかし我々はなぜか徳島市内のホテルからの出陣である。理由は…、徳島の街の夜遍路(要するに居酒屋巡り)の楽しみと、シティホテルの居心地の良さを捨て切れなかったのである(笑い)。
 5時40分発阿波池田行きの始発電車に乗ることにして、早めにベッドに入った。4時40分にアラームをセットしたのだが、3時半すぎに目が覚めてしまった。テレビのスイッチを入れると、WCラグビーのニュージーランドVSフランスの試合が始まっていた。そうか試合は今日だったのか。お遍路に忙しくて気がつかなかった。世界一の球さばきとパワフルな突進に見惚れているうちにあっという間に出発時刻である。
 これから始まる大決戦「藤井寺→焼山寺へんろころがし突破戦」を前に、ラグビー日本代表の五郎丸選手みたいに武者震いしながら徳島駅に向かった黒ちゃんでありました(笑い)。

 JR鴨島駅からタクシーを飛ばし、藤井寺の遍路道の入り口に取り付いたのが6時半。アイドリングモードでゆっくり登り始めるとすぐ、後ろからひとりのおじいちゃんが追いついてきた。普段着にスニーカー、腰に小さなウエストバッグ、木の枝を杖代わりにしている。世間話をしながらしばらく一緒に歩く。歳は70歳、石川県の会社で働いていたが定年後地元に帰り、現在は家庭菜園をしながらの年金生活。朝早く目が覚めて困るので「しかたなく」毎朝散歩をしているのだという(笑い)。
 「へんろころがし決戦」開始直前の緊迫したグラウンドに、突然散歩老人が紛れ込んできちゃった感じである。場違いだけれどなんか可笑しい。早起きして「へんろころがし」に負けないで焼山寺へ、と肩に力が入っていたのが、ふっと軽くなった。
 しかも「イノシシは大丈夫ですかね」と恐る恐る聞く黒ちゃんに「お遍路さんがたくさん通るからここには出ん」と断言するではないか。先月、早朝の遍路道でイノシシに遭遇する危機一髪事件を起こしたばかりの黒ちゃん、正直ホッとした。会ってよかった。これもお大師さまのお導きである。

 やや急な山道をたどっていると、足元に「へんろころがし1/6」と書かれた標識が現れた。なんだこりゃと一瞬思ったが、焼山寺までの山道には「へんろころがし」が6つあり、ここはその1番目ですよということらしい。「高知道のトンネルの表記みたい」と竹内記者が笑う。
 最初の難所「へんろころがし1」は、息が切れるほどではない急な登りが続いたがなんとかクリア。「さて次は」と身構えたのだが「へんろころがし2/6」がなかなか現れない。ひょっとして見逃したのかもしれないと思いながら長戸庵、柳水庵、一本杉庵とアップダウンを繰り返しながら3時間ほど歩くが、2だけでなく3も4も5も現れなかった。
 ところが神山町左右内(そううち)集落を抜け、鮎喰川(あくいがわ)水系の沢を渡り再び登り勾配に入ったところで突然「へんろころがし6」が現れた。「2から5まではいったいどこへ行っちゃったの」である。
 「へんろころがし6」はしかし、かなり手強い相手だった。1よりも圧倒的に長く急な山道だった。なんとか耐えて焼山寺の境内にたどり着いたのが正午。途中休憩をはさんで正味4時間の戦いだった。ラグビーに比べてちょっと試合時間は長かったけど、結構がんばったと思う。準決勝突破、じゃない、四国遍路屈指の難所突破である。

 12番札所・焼山寺(しょうさんじ)は66番札所・雲辺寺に次ぐ高所にある。「誰よりも山寺を愛す」黒ちゃんと竹内記者好みの素敵な山寺だった。樹齢数百年の杉の巨木に囲まれた境内には「キョキョキョ」というアカゲラの鋭い鳴き声が響きわたり、修験の山らしい雰囲気に満ち満ちていた。
 御本尊は虚空蔵(こくうぞう)菩薩、寅年生まれの黒ちゃんの守護仏であることもうれしかった。

四国遍路屈指の難所を突破して一句
<苦しくも ころがされても 一歩づつ>

黒笹慈幾


12番焼山寺への遍路道は、11番藤井寺の裏手からいきなり登山道になる。


これがモンダイの「へんろころがし1/6」の道標。6つあるうちの第1番めと解釈した。


朝の散歩中の地元のおじいさん(70歳)と一緒に「へんろころがし1」の途中で記念撮影。


第一チェックポイントの「長戸庵」。ここまで約1時間半の歩き。


長戸庵をすぎてすぐ、徳島平野とその真ん中を貫く吉野川が見下ろせる絶好のビューポイントがある。


長い年月をかけ、しっかり人の足で踏み固められた遍路道は歩きやすくてしかも美しい。


第2のチェックポイントの「柳水庵」。かつてはお遍路さんを泊める宿だったが今は閉鎖中。地元のボランティアのおばちゃんたちが定期的に清掃している。この人は息子の嫁が高知市出身だと言って嫁を呼び出し、その携帯を黒ちゃんに「はい」と手渡した。しょうがないので「もしもし、初めまして」と見ず知らずのお嫁さんと会話することに。


柳水庵の直下の平坦地に建てられたお遍路さんの「無料宿泊所」。手入れが行き届いていて中は清潔に保たれていた。


第3のチェックポイント「一本杉庵」。お大師さまの石像を抱きしめるように、幹から何本も枝分かれした杉の大木が立つ。


間を飛ばして突如現れた「へんろころがし6/6」の道標。6番めはかなり手強い対戦相手で実際歩いてみると何度も転がされそうになった。


「へんろころがし6」との戦いに疲れ、途中のベンチで体力回復中の黒ちゃん。


焼山寺の境内。正面が本堂。修験の山寺らしい質実剛健な造りである。


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