Let’s go o-henroad! 「お遍路ードプロジェクト」について

95日目「前半は吉野川が作った平野を縫う徳島の遍路道」(2015年10月17日)

歩数 21896歩
距離 13.1km
消費カロリー 582kcal

 徳島県内の札所は1番から23番まであることは昨日のこのブログで書いた。しかし23の寺が徳島のどのあたりにどう散らばっているのか、遍路道はそれをどう繋いでいるのか、他県の人間にはわかりにくい。そもそも土地勘のない人間の頭の中の地図と地名はリンクしていないのが普通だからである。
 徳島県内の1番からの札所は住所表示で表すと、鳴門市から始まり順に板野郡板野町、板野郡上板町、阿波市、吉野川市、名西郡神山町、徳島市、小松島市、勝浦郡勝浦町、阿南市、海部郡美波町に配されている。古い地名ならまだしも平成の大合併で旧地名も失われたので、基本的によそ者である歩き遍路たちは、遍路地図を広げて赤い破線で書かれている歩き遍路道のルートを頭に叩き込むしかない。
 ただし、自分がいまどこを歩いているのかには関心がなく「とにかく次の札所まで道を間違えずに着ければいい」というひとは、例の「赤い矢印」マークや案内板を見逃さないように慎重に歩けばよい。
 しかしそれでは旅の面白さの大半は失われてしまう。歩き遍路は札所をスタンプラリーのように繋ぐだけではなく、そのルート上にある森羅万象の情報を自分の中にインストールして楽しむホリスティックな行為なのだから。
 アウトドア雑誌を作っていたからというわけではないが、黒ちゃんは自分がいま地球上のどの場所を移動しているのか、どんな地形・地勢の場所をどっちの方角に進んでいるのか、目の前の川はなんという川の水系で、どの湾に注ぐのか、遠くの山並みはなんという山系で、山の向こうにはなんという町があるのかなどをリアルタイムに検証しながら歩かないと「ストレスが溜まる」症候群なのである。
 で、遍路地図を大きく広げて、お遍路のルートが徳島県内をどういうふうに縫っているのかを俯瞰で眺めてみた。真面目な歩き遍路さんならば歩く前にする作業だが、黒ちゃんは「一夜漬け派」なのでお遍路の現場でやっているわけである。その結果以下のようなことがわかった。
 まず、吉野川が作った広大な平野の、上流から見て左、香川県境の山の麓、海から7、8km内陸に入ったあたりに1番札所が置かれ、そのまま山裾に沿って吉野川の上流方向に10番までが配置されている。
 次に針路を南にとり、徳島平野を一気に横断して吉野川の対岸に渡り、反対側の山の麓と頂上に11番、12番。次は山を下り、吉野川の支流・鮎喰川(あくいがわ)の谷に沿って13番から17番が散らばり徳島市へ。
 18、19番が小松島市の山裾を回りこむ形で置かれ、そのまま勝浦川の谷沿いに上流に向かい20番、川を渡って対岸に21番、ひと山越えて桑野川のほとりに22番、ふた山越えて日和佐海岸のある美波町に出て23番が散らばるという感じなんですが。ちょっと、文字だけでお伝えするのはやはり限界がありますね。

 さて、今日の行程は吉野川が作った平野の、香川県境の山の麓沿いに散らばる残りの札所全部、つま7番から10番までを片付ける、じゃなかった打ち終わる1日だ。まずは昨日の最終地点である6番札所・安楽寺に8時過ぎに到着したのだが、早くもここでつまずいた。黒ちゃんの知り合いの大仏師・松本明慶さんの作品群(特に本堂奥に安置されている十二神将像)を見たかったので、社務所で丁重にお願いして住職に取り次いでもらったが、けんもほろろに断られちゃったのだ。
「松本明慶さんの知り合いですが」と言付けたのだが…。「お大師さまの知り合いなんですが」と言えば見せてもらえたのかも(笑い)。心の狭いお寺である。
 気を取り直して、7番札所・十楽寺(じゅうらくじ)に向かう、田んぼの中の道をのんびり歩いて20分ほどで到着。山門の2階に愛染明王(あいぜんみょうおう)を安置してあるので参拝。夫婦円満の仏様である。この寺の御本尊は阿弥陀如来。
 1時間ほど歩いて到着した次の8番札所・熊谷寺(くまたにじ)は、見事な山門(仁王門)が自慢の寺である。高さ13メートル、江戸時代に作られたもので四国霊場中最大だそうである。
 御本尊は千手観世音菩薩。
 9番札所の法輪寺へは、田んぼの中の遍路道を30分ほど、のんびり歩いて到着した。途中、ところどころにまだ稲刈りの済んでいない田んぼがあって、黄金色に色づいた稲穂が揺れていた。法輪寺は小さくてこじんまりとまとまったお寺で、御本尊は涅槃の釈迦如来。本堂には「健脚祈願」のお願いわらじが奉納されていて面白かった。
本日最後の寺、10番札所・切幡寺(きりはたじ)は、急な林道を登り、さらに300段を超える石段を登り詰めた高台に建てられていた。その名前の由来になった尼僧の伝説があり(詳しくは長くなるのでここでは書かない)「女人即身成仏の寺」として知られ、女性に人気がある。御本尊は千手観世音菩薩。四国霊場中最大最古といわれる多宝塔は立派で、その境内から見下ろす徳島平野の景観も素晴らしい。

切幡寺に向かう山道でハンミョウを見つけて一句
<ハンミョウに  寺への道を 教えられ>
※註(ハンミョウは体長2cmほどのオサムシ科の甲虫。別名ミチオシエ)
黒笹慈幾


コスモスが秋の遍路道を華やかに彩る。


7番札所・十楽寺の山門。2階に愛染明王が安置されている。


この日は閉まっていたが。「お大師さまをこんな風に気軽にパクっていいの?」って感じである。


津波避難タワーじゃありません。火の見櫓(やぐら)です。もう使っていないようだったが、異様に高い。ちなみに竹内一記者は火の見櫓がなんだか知らなかった。世代のギャップを感じるなあ。


遍路道の脇の刈り取りが終わった田んぼが残した秋の幾何学模様。


8番札所・熊谷寺の山門。四国霊場中最大だという。


起伏の少ない平地の歩きは視界も開けて気分が軽やか。ついつい記念写真を撮りたくなる。黄金色の稲穂をバックに。


9番札所・法輪寺のこじんまりとした境内。モズの特徴ある鳴き声が響いていた。


10番札所・切幡寺入り口の土産物屋さんの駐車場でイノシシ発見!と思ったら、野生のイノブタ(イノシシと豚のハイブリッド)だそう。一瞬緊張したが「お遍路さんを見ても逃げないの」と店のおばちゃん。なーんだ。


切幡寺の境内へは200段以上もある急な階段を一気に登る。こんな横綱級の階段は讃岐の弥谷寺以来だ。


切幡寺の本堂脇からさらに100段近い階段を登ると、四国霊場中最大最古の多宝塔がある。


多宝塔の境内から見た徳島平野。真ん中に四国三郎と呼ばれる吉野川、向こうの山並みは「遍路ころがし」の急登遍路道が控える焼山寺の方向か。


夜遍路に出た徳島市内の夜景。水に映る明かりが、紅楼の巷へと誘惑する(笑い)。


徳島市内を夜遍路していて見つけた小洒落たイタリアン「椿ダイナー」の牛肉のグリル。カリカリに揚げたポテトとのマッチングが素晴らしい。「グラスワインのラインアップもなかなか」と竹内記者評。お遍路のパワー充填にどうぞ。
徳島市南新町2-2-2 088-623-6767


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