Let’s go o-henroad! 「お遍路ードプロジェクト」について

92日目「讃岐のイノシシに見送られ、峠を越えて阿波の国へ」(2015年9月28日)

歩数 21998歩
距離 13.1km
消費カロリー 651kcal

 9月のお遍路ードの最終日。朝6時43分、JR高徳線三本松駅から始発の徳島行き普通列車に乗る。3つ先の讃岐相生駅まで昨日歩いているので、そこ までの移動である。7時15分過ぎに駅前から歩き始めた。遍路道は一瞬だけ国道11号に合流するが、そのあとすぐに相生の民家の間を縫う細い路地に入り込 んだ。
 今乗ってきたJR高徳線の線路下をくぐるとすぐ、道は未舗装の山道になった。この遍路道は香川と徳島の県境となる大坂峠をまたいで、徳島県板野郡板野町につながっている。
 板野町には四国88箇所霊場の3番、4番、5番の3つの札所があるが、あえて今日は打たずに、手前のJR板野駅までにするつもりだ。10月から新た な気持ちで、1番札所・霊山寺(りょうぜんじ)から阿波路のお遍路を始めたいからである。31番竹林寺スタートの我々は、まだ札所を30も残している。
 大坂峠越えの遍路道は登山道だが、かなりの道幅がある。明治時代にそれまでの遍路道を改装し、車馬も通行できる規格にサイズアップしたからだ。さし ずめ「高規格遍路道」といったところだろうか。広いだけではなく勾配も緩やかに作られているので、息が切れぬ程度の快適な登りの連続である。このまま気持 ちの良い峠トレッキングをエンジョイできると思ったのだが…。お大師さまは最後の最後になってとんでもないサプライズを用意していたのである。

 黒ちゃんの進行方向左手前方15mほどの藪の中から、突然大きなうなり声が聞こえたかと思うと、落ち葉を吹き上げて一頭のイノシシが登山道に躍り出 てきたのである。野生の猛獣特有の猛々しい息遣いが聞こえる。サイズは…。やばい!一人前の大きさの成獣である。慌てて後ずさりした黒ちゃんに向かって、 イノシシは一瞬向かってくるそぶりを見せたが、すぐに右手斜面の藪の中に姿を消した。しばらく落ち葉の上を猛スピードで移動する音がしていたが、やがて聞 こえなくなった。
 「いやー驚いた。昨日のイシガメに続き、今日はイノシシのお出迎えだ」と茶化した黒ちゃんだったが、間一髪、本当に危ないところだった。単独行だったらこのまま怖気づいて引き返すところだが、竹内記者もいることだし、もう大丈夫だろう。
 念のため黒ちゃんは左手に大きめの岩の断片、右手にトレッキングポールを持ち、「ホッホウ、ホッホウ」と大声をあげながら歩いた。相手に我々の居場所を教えるためである。岩は気休めだとは思うがいざという時の武器(笑い)。
 竹内記者の反応がおかしかった。あわててアイフォンのスイッチを入れ、ボリュームを最大にして音楽をかけたのである。それもオペラ、マリア・カラスの 「蝶々夫人」である。黒ちゃんが「相手に先に人間の存在を知らせてやれば、野生動物はむやみに人を襲うことはない」と解説したからだ。たぶんさっきのイノ ちゃん(ここから急に親しみを込めて)はマリア・カラスの美声を聴いた日本で最初のイノシシになるはずだ、なんちゃって。

 やや冷静になってから黒ちゃんは考えたのだ。イノちゃんだって人間を脅かそうと思って出てきたわけじゃないだろう。今日はたまたま休日で久々の晴 天、いつもは暗いうちにねぐらに戻るところを遅いモーニングを食べていて(たぶん秋だからクリ、ドングリ、ミミズ、ヤマイモ、キノコあたりか)つい長居し てしまい黒ちゃんたちに出くわしただけだと。
 いやいや、2か月にわたる讃岐の遍路を無事終えて高知に帰る尺取り虫遍路隊を、イノちゃんは地元のイノシシ代表として見送りにきたのかもしれない。
 とにかく昨日と今日の2日間は、意外な野生生物との接近遭遇で大いに盛り上がった遍路でした。ご出演いただいたイシちゃんとイノちゃんありがとう。そしてサプライズの総合プロデューサー、大師さまにも感謝申し上げる。

 イノシシとの間一髪接近遭遇から生還して一句
 <イノちゃんの お邪魔しました モーニング>

 84番札所・屋島寺の門前から出発して、八栗寺→志度寺→長尾寺→大窪寺→大坂峠越えと6日間にわたって刻んできた9月のお遍路ードは、今回で終了です。10月は中旬からのスタートを予定しています。ここまでのご愛読ありがとうございました。

黒笹慈幾


相生の集落を抜ける遍路道。このあとこの道は香川・徳島県境をまたぐ大坂峠の入り口につながる。


大坂峠に至る遍路道の始まりはこんなに幅広い。


大坂峠越えの江戸時代以来の遍路古道が明治時代に改修されて広くなったことを解説した案内看板。


快適な登りを楽しんでいた黒ちゃんだったが…。この直後、左の藪の中からイノシシが飛び出した。


イノシシの食事跡。キバと鼻を使ってこのようにブルドーザーのように土をほじくり返してミミズを食べる。


万が一に備えて岩のかけら持参でイノシシ遍路道を進む。


大坂峠の道標。ここはもう徳島県である。


いよいよ、1番札所への道標が現れた。


大坂峠の徳島側の登り口、大坂口御番所跡で小休止。それにしてもエキサイティングで危機一髪な大坂峠越えであった。


本日の歩きはJR高徳線の讃岐相生駅で終了。もちろん無人駅です。板野町に入ると3番札所・金泉寺の赤矢印が出現した。


遍路道沿いにある無人の阿波大宮駅。徳島に入ったことを実感させる駅名だ。


9月遍路の終着駅はJR高徳線板野駅。来月はまたここから歩き始めます。


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