Let’s go o-henroad! 「お遍路ードプロジェクト」について

90日目「身も心もさわやか系のホームレスお遍路さんに遭遇した」(2015年9月26日)

歩数 22249歩
距離 13.3km
消費カロリー 755kcal

 結願の寺・大窪寺を打ち終えて、昨晩は「竹屋敷」という温泉宿に泊まった。観光案内所などで配られている無料のお遍路ガイドブック「讃岐23カ寺高野山参り」の中に「結願の湯宿で心に残るひとときを」というそそる広告コピーが踊っていたのを竹内記者が見つけ、前日に予約を入れたのである。
 1日雨の中を歩く覚悟だったので、広告にある「歩き遍路の方、送迎あり」も心強かった。いざという時は電話で救援のピックアップを頼めるし。
「竹屋敷」は大窪寺の門前で名物「打ちこみうどん」の店を構える「野田屋」と経営が一緒だということも分かった。結願のうどんと湯宿を両方提供する「門前ビジネス」なんである。
 居心地は広告コピーに負けないくらいよかった。なによりやや熱めの天然温泉の湯がよい。ここのお湯は弘法大師ゆかりの「衆患悉除(しゅかんしつじょ、健康を守ってくれる功徳のこと)の霊水」で、「大窪寺薬師湯温泉」の別名もあるらしい。黒ちゃんはブログの原稿を書く途中でまずひと風呂、食事の前にふた風呂め、寝る前にみ風呂、朝起きぬけによ風呂と、1日4回も入ってしまった。
 夜の食事も朝の食事も山の温泉宿らしいシンプルで洗練された献立で、量も黒ちゃんの胃袋のサイズにぴったりで好もしかった。竹内記者も大いに気に入ったようで「もう一泊していきましょうよ」となったのだが、「シルバーウイーク明けで明日は休みます」と宿の人に冷たく言われて断念した(笑い)。
 一泊二食付き9000円は遍路宿としてはやや高価だが、結願を祝うと思えば納得の価格だと思う。もっともうちの奥さんあたりに「パパたちは結願じゃないのにぜいたくね」と言われればその通りである。連泊できなくてよかったかも(なんのこっちゃ)。

 宿で茹でてもらった女体山のお接待・うっふん栗の味だが、これがじつに素晴らしかった。ねっとりと舌にまとわりつく食感、過剰でないほのかな甘味、頬張るのに十分な粒の大きさ、すべてに女体山の配慮が行き届いた完璧なお接待であった。食べきれなかった分は、黒ちゃんの行動食として今もザックの中に収まっている。

 8時に宿の車で大窪寺門前まで運んでもらい「野田屋」でしょうが湯のお接待をいただき、歩き始めたのは8時20分くらいだった。今日の行程は徳島県鳴門市の第1番札所・霊山寺(りょうぜんじ)まで、約60km余のお遍路さんの「お礼参りルート」をたどるつもりだった。大窪寺→八丁坂→中尾峠→白鳥温泉→三宝寺という歩き遍路専用ルートである。
 ところが、八丁坂の手前の五名(ごみょう)トンネルを出たところで道を間違え、反対方向の国道377号線の車遍路ルートに進んでしまったのである。間違いに気づいた時にはもうかなり進んでいたので、止むを得ずそのまま歩くことに。歩き遍路コースに比べ、峠を迂回するので距離が長い。約2倍だ。しかも国道歩きなので写真を撮りたくなるような景色も山里の風景もない。徒労感だけが残る残念なミスだった。

 ただ、このミスには原因があったので、そのことを少し書く。歩き始めて1時間ほど、国道377号線から外れ、山の中の「四国のみち」に迂回し再び国道に合流したときである。2人組のお遍路さんが大窪寺の方向から国道を歩いてきた。二人とも尋常のお遍路さんでないことは一目でわかった。昨日の大窪寺の門前の公園で荷物を乾かしていた2人組である。
 取材してわかったのだが、ひとりは東京出身、元トラック運転手の酒巻誠さん、61歳。もうひとりは身分を明かさなかったが65歳くらいの男性。ともにかなりの重量の荷物を背負っている。筋金入りの「野宿派歩き遍路さん」である。
 竹内記者も黒ちゃんもともにマスコミ関係者(竹内記者は現、黒ちゃんは元が付くけど)なのに、こういうタイプのお遍路さんはニガ手で、今まであんまり触らないできた。理由は「コメントが画一的で面白くない」「妙に饒舌で自分のことばかりしゃべる」「お遍路の先輩ヅラする」「宿の食事の話ばかりする」などなど(黒ちゃんと竹内記者の意見をまとめました)。
 それが酒巻さんは違った。会社を辞めた9年前から周年遍路に出ていて、結願も30回以上になる。「20回めまでは数えていたけど、いまはそんなことどうでもよくなって」「無一文で托鉢をしながら歩いてる」というから、正真正銘のホームレスである。でも身なりはさっぱりしているし、無一文を恥ずかしがる気配もない。身も心も見事な「さわやか系」なんである。
 わずか5分くらいの立ち話だったが、妙に気持ちの良いホームレス、じゃなかったお遍路さんだった。そんなさわやかな出会いの余韻にひたっていて道を間違えたのである。
 酒巻さんに「お大師さまに会えましたか」と聞くと「会えたような、まだのような…」と微妙な返事だった。黒ちゃんは「もうすぐ会えるんじゃないでしょうか」という言葉を贈りたい気分である。

 さわやか系お遍路さんのせいで道を間違えて一句
 <お四国は 迷う自由を もらう旅>。

黒笹慈幾


女体山のお接待のうっふん栗。旅館「竹屋敷」に持ち帰り、茹でてもらった。大きくて甘くて、しかも上品な味でございました。


「竹屋敷」の夜のメニュー。結願の湯宿の祝い膳である。


88番大窪寺から1番霊山寺に向けて一歩を踏み出す。雨上がりのへんろ道はしっとりと濡れている。


前日の雨で沢の水も増水気味。飛び石の上まで水が来ているので、早足で渡る。


さわやか系ホームレス遍路の酒巻さん、61歳。無一文ライフを明るくエンジョイしている様子を語ってくれた。元はトラック運転手。托鉢しながら9年間ずっとお四国巡りを続けている。


大きな荷物を背負い、カートを引きながらの遍路旅。すべて野宿をし、約3か月で一周するペースだという。まさにコンプリート・ウォーカーである。


ムラなくきれいに日焼けした足に白い爪のコントラストがまぶしい(笑い)。ホームレスだが、洗濯をこまめにしてできるだけ身綺麗にしているという。


肩掛け式巡礼バッグ(山谷袋という)の金具の錆び具合。歩き遍路9年の歳月の重みが、こんなところに表れている。


東かがわ市に入るとサトウキビ畑が目立つようになってきた。和三盆糖の原料である。電気柵は野生の猿やイノシシ対策だろう。


本日の歩きは、東かがわ市入野山の三宝寺まで。浄土真宗のお寺だった。


三宝寺バス停で今日の宿がある三本松までのバスを待とうとしたが、1日3便しかなくて時間が合わない。止むを得ずタクシーを呼んだ。


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