Let’s go o-henroad! 「お遍路ードプロジェクト」について

66日目「ぶっつけ本番、予習なしのお遍路はいけません」(2015年5月12日)

歩数 26009歩
距離 18.2km
消費カロリー 880kcal

 ステーキハウス「ケルン」はホテルから5分ほど歩いた住宅街の一角にあった。西条市入りして初めての夜遍路、イザ出かける段になって日曜日だということに気がついた。駅周辺の居酒屋は全部アウト、「ケルン」の他に選択肢がなかったのである。
 お遍路ロード初の優雅でバタくさい晩酌&夕食である。少し贅沢かなと思ったが、居酒屋遍路だってズルズルと飲んでいればそれなりに支払いは積もる。いちばん控えめな値段の「ケルンステーキセット」(肉160g、グラスの赤ワイン、サラダ、スープ、デザート、コーヒーつき)を注文したのだが、味は控えめどころか素晴らしいものだった。充分に熟成された赤身の肉と新鮮な野菜の美味しさを堪能した。
 「柔らかい肉は土佐赤牛ですよね?」と期待満々で尋ねると、店主と思われる年配の女性が気の毒そうな顔で「いいえ、肉は東京から直接仕入れてますの」とザンネンな返事。寒風山トンネルを抜ければ、1時間で土佐赤牛の里に行けるのに…。高知ラブ黒ちゃんの「美味しくてやがてガックリ、ステーキ編」でした。

 いよいよ5月のお遍路ード最終日である。今日は電車で昨日の最終地点JR伊予三芳駅まで戻り、そこから西条市小松町の61番・香園寺(こうおんじ)と62番・宝寿寺(ほうじゅじ)、西条市氷見の63番・吉祥寺(きちじょうじ)、西条市洲之内の64番・前神寺(まえがみじ)の順で打っていく。
 60番・横峰寺だけは、残りの体力と時間を考えて6月に先送りしたことを昨日のこのブログで書いた。
 1日で4つの寺を回れるのは効率がいい反面、準備が大変である。事前に寺の縁起や見どころなどを予習してから歩くのがベストなのだが、若い頃から「締め切り直前やっつけ派」の黒ちゃんゆえ、どうしても前夜のホテルでの「駆け込み予習」になる。札所の数が少ないうちはそれでもなんとかなっていたが、今回ついに破綻してしまったのである。

 「えーとえーと、次の寺の名は?どんな寺なんだっけ?」てな感じで、前の札所を打ち終えるとその場で次の札所の予習をするというドロナワ式遍路になっちゃった。ひどいときには寺に着いて参拝、納経を済ませた後「えーと、この寺はと…」とスマホで検索をするありさまである。
 こんなことは松山市に入る前までは経験しなかったことである。しかし、これから香川に入れば札所の密集度はもっともっと高くなる。「出発前の充分な予習」の必要性を痛感した5月のお遍路ードでありました。

 さて。昨日の粋な仕事ぶりを評価して、今日もルート探索はグーグル君に任せることにした。伊予三芳駅から小松町を目指すルートを「グーグルマップの徒歩モード」を頼りにたどる。しかし今日は「今治小松自動車道」脇の殺風景な一般道を高速道に沿って延々と進む、あんまり粋じゃないルートが多かった。
 頭上から高速道を走るクルマの風切り音とつなぎ目で出る走行音が降ってくる。こっちは時速4km、あっちはたぶん時速70〜80kmであろう。じつに20倍のスピードである。ところが移動しながら20倍の情報が入ってくるかといえば、そうではない。逆に歩くことによって入ってくる情報の方が圧倒的に多い。移動の「楽しさ」という意味では歩く方がクルマより優れていると思う。歩き遍路という文化の奥深さはそんなところに潜んでいるのかもしれない。
 我々の正面には絶えず春霞の向こうに浮かぶ石鎚の稜線が見えている。それがぐんぐん近づき輪郭もはっきりしてきて、最後には手前の山陰に隠れてしまった。時速4kmでじりじり進む尺取り虫遍路でも、確かに前に進んでいることを実感する出来事だった。

 61番札所・香園寺に伽藍はなかった。あるのはコンサートホールと見紛う巨大なコンクリートの建物に収まった本堂と大師堂であった。御本尊の大日如来像も弘法大師像もなんだか居心地が悪そうに見えたのは私だけだろうか。お大師さまの意見を聞いてみたいものだ。

 62番札所・宝寿寺には伽藍があったので、正直ほっとした(笑い)。国道沿いの狭い敷地の中に小さくて簡素な木造の本堂と大師堂が建てられていた。比べるのは不謹慎かもしれぬが、黒ちゃんはこっちの方が心が落ち着く。御本尊は弘法大師が彫像したと伝わる十一面観音菩薩。

 63番札所・吉祥寺は四国霊場の中で唯一、毘沙門天(びしゃもんてん)を本尊にいただく寺である。境内にはその下を潜ると貧苦を取り除き、富貴財宝を授かるという「くぐり吉祥天女」の石像が建っている。吉祥天は毘沙門天の奥さんだから夫婦共稼ぎのお寺ですな(なんのこっちゃ)。
 全然カンケイないけど、東京の吉祥寺は黒ちゃんが高校時代に3年間下宿した青春の町です。

 64番札所・前神寺は石鎚山の麓にある真言宗石鉄派の総本山。修験道の根本道場とされていて、弘法大師空海も若いころ石鎚山に2度入山して修行をしたという。明治新政府の「神仏分離令」で廃寺を経験したが、明治22年に再興されたという。すぐ隣にある石鎚神社の方が大きくて存在感があるのはその影響らしい。土佐神社と30番札所・善楽寺のカンケイによく似ていると思った。
 前神寺は本堂に回廊を付けたり、境内に芝生を張ったり、屋根の形や反りを工夫しているのだろう妙にカッコいい。おしゃれな「デザイン系札所」というのが黒ちゃんの感想です。

 さてさて。昨日まで松山市郊外をスタートして今治市内そして西条市へ、札所でいえば54番から59番まで6つの札所を順調に打ってきた。そして最終日の今日は61番から64番までの4つの札所を打ち終わった。わずか1週間で納経帳にスタンプが、いや、朱印と墨書が10コも増えたのは望外の喜びである。これで6月も頑張れそうな気がする。
 1週間にわたって黒ちゃんのお遍路ブログ「釣りときどきお遍路」日記にお付き合いいただき、ありがとうございました。6月は今回スルーした60番札所・横峰寺に参拝したあと、石鎚山の頂上に立ってみたいと考えているが、さてどうなるか。ご期待ください。

 予習なし。ぶっつけ本番ドロナワ遍路を反省して一句
 〈情けなや スマホ頼みの 4寺打ち〉
黒笹慈幾


麦畑の広がる田園地帯に拓かれた分譲地。気になって土地代を見ると坪8.8万円。勝手な計算だが、西条市国安地区では2500万円くらいあれば写真のような家が建つ計算になる。


黄金色の大麦畑の向こうに見えるのが石鎚山。来月はあのピークに立つつもりなんだが、果たして。


これが四国霊場第61番札所・香園寺の外観である。どこかの音楽ホールのようだ。本堂と大師堂は外の階段を上がった2階ホールに収容されている。火気が危ないのかホール内で灯明や線香は禁止されていた。


ご本尊はこの大宇宙神、大日如来である。音楽ホールの舞台の上でなんだか恥ずかしそう。


札所同士がこれだけ近いとお遍路の効率はあがるが、予習が追いつかない事態が生じる。なかなか悩ましい。


62番札所・宝寿寺。こぢんまりした寺だが静かな境内で抹香の香りをかいでいるだけで心が落ち着く。


JR小松駅前のレストランで西条名物「てっぱんナポリタン」を頼んだらアツアツが出てきた。ケチャップを惜しみなく使った濃い味付けとこのボリュームはスゴイ。最後の一本まで熱いのを食べられるのは鉄板のおかげだ。


第63番札所・吉祥寺の立派な山門。


吉祥寺の境内に建つ吉祥天女像は足元に、人ひとりが通れるこんなトンネルがある。ここをくぐればご利益がある。


前神寺に至る農道沿いには、あちこちみかんの花の濃密な匂いが漂っていて「花酔い」しそうになる。


前神寺の本堂とその横の回廊。シンメトリーの曲線美がある。回廊の前面には緑の芝が張ってあり、屋根の緑青色と見事な調和を見せている。素敵なデザイナーズ伽藍である。


本堂の両脇に続く回廊にも建築美がある。ここでファッションショーができそう。


お遍路を終えてJR石鎚山駅の待合室で電車を待つ間、しばし仮眠中のふたり。奥が竹内記者、手前が私。自撮り棒があればもっと面白い絵になったのに残念。


5月の歩き遍路を無事終えてホームに佇むお遍路さんひとり。少しカッコつけすぎですかね。


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