Let’s go o-henroad! 「お遍路ードプロジェクト」について

64日目「休養日明けの1日4か寺めぐり。お大師さまのご機嫌が気になる」(2015年5月10日)

歩数  25062歩
距離  20.5km
消費カロリー  882kcal

 太ももの筋肉痛を癒すべくお遍路をさぼって1日バス遠足で大三島に出かけた昨日であったが、その甲斐あってふたりとも足の調子に改善の兆しが見えてきた。ここでさらに念押しで、温浴治療を試みようということになった。
 原稿を書き終えた昨日の夕刻、ホテルから歩いて5分くらい、今治駅のちょうど反対側にある日帰り入浴施設「しまなみ天然温泉 キスケの湯」に行った。お遍路の途中で温泉に入るのは2か月前、道後温泉の朝湯に入って以来である。
 「キスケの湯」は予想以上に素晴らしかった。まず、大人(中学生以上)1名570円という料金がうれしい。いまどきひとり1000円をとるスーパー銭湯がいっぱいあるのに、この奉仕価格は立派である。ちなみに4歳以上小学生までは1名310円である。
 加えて、疲労回復にいかにも効果のありそうなユニークな浴槽がいい。高濃度炭酸泉、シルクバス、流水歩行路、バブル寝湯、美肌ヒスイ風呂(女性のみ)、パルスマッサージ風呂、子供風呂、立ち湯ジェットバス…。「高知家オールスター」顔負けの「お風呂スター」勢揃いである。
 黒ちゃんは「立ち湯ジェットバススター」と「バブル寝湯スター」が気に入った。ジェットの勢いが半端じゃなくて体の弱った老人などは骨折しちゃうのではと思えるくらい強い。最近流行のイタキモ(痛くて気持ちいい)なんである。腰と足裏に10分くらいジェットを当て続けると、痛みと疲れが泡と一緒に彼岸へ飛んでいく(なんのこっちゃ)感じであった。これでもう明日の体調は大丈夫という手応えがあった。

 さて。本日の話に移ろう。休養明けの今日は、今治市内にある4つの札所をイッキに片付けちゃおうという計画である。第56番・泰山寺(たいさんじ)→57番・栄福寺→58番・仙遊寺→59番・国分寺へと回遊する全長約20kmほどの行程である。ここでイッキに昨日の名誉挽回、お大師さまの心象を良くしておこうという算段である。なぜかといえば、今日は朝から雨模様、お大師さまのご機嫌はまだまだのようなのである。
 朝8寺、宿泊している今治駅前のホテルをスタート、駅からまっすぐ南下して住宅街のど真ん中を抜けて泰山寺を目指す。途中、甲子園の常連校「今治西高等学校」の脇を通った。校舎の窓の下には、各種スポーツ大会や文化活動の華々しい成果をアピールする垂れ幕がびっしり、 校舎の横には立派な野球場と合宿所らしい建物も並んでいて、洗濯物が風に揺れていた。

 第56番札所・泰山寺は石垣が異様に立派な寺だった。石組みが美しくて、このままどこかのお城に持っていっても充分通用するかと思われた。御本尊は地蔵菩薩、境内にはこれを回すと六道輪廻(地獄や餓鬼など衆生が背負う6つの迷界のこと)の絆を断てるといわれる「地蔵車」の石塔が建てられていたので、思いっきりグルグル回しておいた。
 第57番札所・栄福寺へ向かう道は途中から用水路に沿う自然道に変わった。足元がアスファルトから土に変わるだけでこんなに足が軽くなる。土の力は偉大だ。人の足は土の上を歩くように作られているんだなと、実感する。

 栄福寺の住職、白川密成(みっせい)さんはコミュニケーション能力の優れた人らしい。書店の店員を経て住職になり、糸井重里の「ほぼ日刊イトイ新聞」に連載を持ったほどの筆力がある。納経帳に墨書をいただいた際に、ご本人らしき人に声をかけていただいた。
 「区切り打ちですか?」と聞かれたので「ええ、尺取り虫方式で高知から歩いてここまで1年かけてのんびり」と応じると、「いいですね。お遍路は楽しく歩くのがいちばんです」と褒めていただいた。スマホで調べてみると白川住職は「ボクは坊さん。」(ミシマ社)、「空海さんに聞いてみよう。心がうれしくなる88のことばとアイデア」(徳間書店)など、ベタで柔らかいタイトルの本を書いている。黒ちゃんは元編集者なのに不明にしてその名を存じ上げなかった。この際だから読まねばなるまい。
 栄福寺は弘法大師が海神供養をしたことから海陸安全、福寿増長の祈願寺とされている。ご本尊は阿弥陀如来である。

 栄福寺から第58番札所・仙遊寺への道は途中から急峻な山道になった。急登で息が切れるが、落ち葉でふかふかの山道はそれだけで楽しい。病み上がりの太ももの筋肉が喜んでいるのがわかる。
 仙遊寺は久しぶりの本格派の山寺だった。正式名称は「作礼山千光院仙遊寺」。作礼山の頂上近く、標高300mに建てられているのだ。作礼山にはトレッキングコースが作られていて、このお遍路道もその一部になっているようだ。
 仙遊寺までは参道の途中に植えられたシャクナゲの白や赤の美しい花が楽しめる素敵なアプローチだったが、立派な山門をくぐってからの歩き遍路専用の参道が急で長かった。これって、しんどいことで知られる久万高原町の山寺・岩屋寺の参道といい勝負だ。久しぶりに思いっきり汗をかいて境内に入った。
 竹内記者の解説によると名前に「遊」の字が入ったお寺はここだけだという。仙人が遊ぶ寺なんて、楽しくていいネーミングだと思う。ひょっとして糸井重里の仕業かも(ウソです)。
 ご本尊は千手観音菩薩。7世紀後半に阿防仙人という僧が40年間修行したあと、弘法大師が開いた寺だそうだ。

 仙遊寺から59番札所・国分寺に向かって急峻な山道を下っていると、雨が強くなってきた。濡れた落ち葉に足を滑らせないように慎重に一歩を刻むのだが、そうすると今度は膝への負担が増す。そろそろ膝が笑い始めてきたころようやく平地に降り立った。
 雨の降る中をひたすら早足で歩くうち、お昼を過ぎてお腹も鳴ってきた。そんなタイミングを見計らったように蕎麦屋さんが現れたのでランチタイムにした。お店の入り口で濡れたレインウエアを脱いでいると、お店の女性が乾いたタオルを手渡してくれた。タオルのお接待は初めてだが、細やかな気遣いがうれしかった。
 美味しいおろし蕎麦と温かい蕎麦湯でリフレッシュしているうちに雨も上がった。やっとお大師様のご機嫌がなおったようだ。残りはあと3.5km、もう一息頑張るぞ。

 久しぶりに足裏で土の感触に触れて一句
 〈足裏に 落ち葉のぬくみ 染みるなり〉
黒笹慈幾


泰山寺の立派な石垣。一瞬この上にお城があるのかと思った(笑い)。


泰山寺の境内にある「地蔵車」の石塔。このクルマを手で回すとご利益があるのだが意外と重くて力がいる。


今日は午後からの降水確率が高いので、こういうスタイルで歩く。首から下げている合財バッグのレインカバーはコンビニ袋を流用。


泰山寺から栄福寺への道の前半は、のどかな住宅街の中を抜ける。


栄福寺への道の後半。やっとアスファルトからさよならして、用水路に沿った気持ちの良い遍路道に変わる。


小雨に煙る栄福寺の境内。足元の土が夜来の雨にぬかるんでいて歩きにくい。


栄福寺の住職の白川密成さんを紹介する新聞記事。これを読むと、相当ポップでぶっ飛んだお坊さんのようである。


栄福寺から仙遊寺に向かう途中の歩き遍路専用道。ずいぶん傾斜の厳しい山道である。


仙遊寺の参道に植えられたシャクナゲの花の清楚なピンク。急登で切れ切れになった息を整えて、しばし見とれる。


仙遊寺の立派な山門。両脇に阿吽の金剛力士像を収める。


山門をくぐると仙遊寺への歩き遍路専用の参道が現れる。標高差300m近くを一気に稼ぐ急峻な登り道。


仙遊寺の御本尊の千手観音菩薩像。かなり派手好きな仏さまのようだ。


蕎麦屋さんとは思えないモダンなデザインの「みのり」の外観。あまりにもステキだったので、ついフラフラと入ってしまった。


蕎麦屋「みのり」のおろし蕎麦。更科風の細麺タイプなのでタレがよく絡む。


お蕎麦のあとはコンビニのホットコーヒーとドーナツで、ほっとひと息ティータイム。こうして地べたに直接座ると妙に落ち着く。


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