Let’s go o-henroad! 「お遍路ードプロジェクト」について

59日目「6泊7日で昼遍路4日、夜遍路5日。大都市滞在型遍路はとにかく忙しい」(2015年3月11日)

歩数 21909歩
距離 15.7km
消費カロリー 900kcal

 まずは朝からの激しい雨を口実に、お遍路をサボってミュージカルを観に行った昨日の報告から。
 演目は2014年11月24日から愛媛県東温市「坊っちゃん劇場」にかかっている「鶴姫伝説」。午前10時半開演の1日1回約2時間の公演が、週1回の休みをとりながら来年1月まで続く超ロングラン作品。まるでブロードウエイのようである(行ったことないけど)。
 客席数が452もある小さな町の大きな劇場である。ちなみに東温市は2004年に旧重信町と旧川内町が合併して誕生した新しい市で、松山市のベッドタウンとして最近人口が増えているとはいえ、松山市の人口51万6000人、東温市の人口35000人(ともに2015年2月の推計)をあわせても55万人だ。東京23区のひとつくらいの市場規模である。

 「こんなところに劇場を作って(失礼!)ミュージカルを毎日かけてお客さんが来るんだろうか」と、他人事ながら心配になり、支配人の今村晋介さんにぶしつけな質問をぶつけてみた。すると今村さんは余裕たっぷりに「うふふ、大丈夫です」と即答したのであろ。
 今村さんによると休日などはチケットが取れないほどの人気なのだという。この日も月曜の平日にもかかわらず席の半分は老若男女で埋まっていた。そして最前列は顔を紅潮させた若い女性たちの「かぶりつき大集団」だった。
 俳句の子規記念博物館といい、ミュージカルの坊っちゃん劇場といい、愛媛県の文化・芸術度の高さには圧倒される。素直にリスペクトすべきだろう。

 「鶴姫伝説〜瀬戸内のジャンヌ・ダルク〜」(作・作詞/高橋知伽江、演出/栗城 宏、作曲/深沢圭子)はほんとうに素晴らしかった。恥ずかしながら黒ちゃん、中休み休憩直前から小さなタオルが手放せなくなり、後半はずっとタオルを目と鼻に当てっぱなしだった。花粉症とミュージカルのダブルパンチで、黒ちゃんの鼻は今後しばらく使い物にならないであろう(なんちゃって)。
 ストーリーも歌も、役者さんの動きもすべて洗練されていて隙がなかった。「ミュージカルってこんなに素晴らしく感動するものなんだ」と生まれて初めて(恥ずかしいけど)気がついた。
 愛媛県の大三島大山祇(おおやまづみ)神社に伝わる伝説を元に、ヒロインの鶴姫が島の平和を守るために戦う愛と戦いの物語。若いイケメン武将クロタカとの悲恋もある。「アナ雪」と「宝塚」とを一緒にしたエンタテインメント作品といったところだろうか。
 女性ファンが多いのはわかるが、黒ちゃんのようなジジイの心も掴んで泣かせるところが憎い。悔しいのでもう一度、今度は家族で観に行こうと思っている(笑い)。

 さて。ミュージカルの話題ばかりで一向にお遍路の話が始まらないので呆れている読者のために、そろそろ本来のお遍路道に戻ることにします。長い寄り道、恐縮でした。

 今日は3月のお遍路ードの最終日である。一昨日まで歩を刻んできた道後温泉から再スタートし、松山市の北西にある2つの寺、第52番札所・太山(たいさん)寺と第53番札所・円明(えんみょう)寺を打って「打ち止め」にする計画である。
 朝9時にホテルを出る。晴れてはいるが冷たくて強い北西の季節風が容赦なく襲ってきて、空身のカラダが時おり車道に持っていかれそうになる。おまけにチラチラ雪まで舞い始めた。
「お大師さまのご機嫌がずいぶん悪いようだけど、なんかしましたかねえ」と竹内記者。
「そうねえ、連日の夜遍路にさすがに寛容なお大師さまもキレたんじゃない」と黒ちゃん。
 そういえばたしかに心当たりがある。二人はそれ以後、お大師さまに恭順の意を表して黙々と歩いた。

 太山寺は急峻な参道を登りつめた先にあった。正式名は瀧雲山護持院太山寺。立派な仁王門は国の重要文化財、本堂は入母屋造りの本瓦葺き、国宝である。本堂には御本尊の十一面観音像が安置されている。
 天長年間(824〜834)に弘法大師が訪れたのを機に法相宗から真言宗に改宗したと解説には書かれていた。山全体が太山寺の所領ではないかと思われるくらい広くて立派な境内である。伊予の豪族河野氏、その後松山城主加藤嘉明、松平家歴代藩主の帰依を得たというのもうなずける。

 太山寺から山を下り、30分ほど市街地を歩くと突然左手に53番札所・円明寺が現れた。正式名称は須賀山正智院(しょうちいん)円明寺。最初の山門をくぐってから20分近く歩かされた太山寺のアプローチと比べるとあっけない
 寺の規模も小さいし、建物もかなり質素だ。黒ちゃんが小学生時代を過ごした東京・中野の新井薬師にとっても似ているので懐かしかったなあ。円明寺は聖武天皇勅願を受けた行基が、伽藍と本尊の阿弥陀如来を刻んだとある。本堂の中の鴨居に左甚五郎作と伝わる龍の彫り物がある。

 

 さて。今日の53番札所・円明寺で3月のお遍路ードは打ち止めである。楽しかった大都市滞在型遍路の終了でもある。名残り惜しい6泊7日1週間の旅であった。
「なんだかもっと長いあいだ旅に出たような感じがするんですけど」と竹内記者。
「昼も夜もお遍路に精出したから余計長く感じるんじゃないかな」と黒ちゃん。
 確かに大都市型遍路は昼も夜も忙しい。でも楽しかったなあ。

昼に夜に忙しい遍路を終えて一句
〈松山の 灯りが恋し 伊予の旅〉
黒笹慈幾

 来月からはまた正統派の「田舎遍路」で今治を目指す予定です。ここまでの黒ちゃんのブログ「釣りときどきお遍路」日記のご愛読、感謝です。また来月会いましょう。


東温市にある坊っちゃん劇場のエントランス。平日の月曜なのに開演が迫ると観客が次々と入場してくる。


支配人の今村晋介さん。製作協力の秋田「わらび座」から愛媛に出向している。「地元らしい新しいミュージカル作品を探している」と言っていたので「ぜひお遍路がテーマの作品を」と頼んでおきました。


鶴姫役の塩月綾香さん、恋人クロタカ役の柳瀬亮輔さんと終演直後に記念写真。黒ちゃんはまだ半べそ状態で目が腫れていて恥ずかしい。


今日の昼遍路のスタートは道後温泉駅。後ろは我々はとうとう乗れなかった路面電車「坊っちゃん列車」。


太山寺までの道すがら、ため池の傍に手書きの看板が。17文字に敏感な黒ちゃんは、山頭火の句についつい目が行ってしまったところを見ると案内看板としては成功だ。


風は写真に写らないので春のポカポカ陽気にみえるが、じつは冷たい強風が吹いていて気温は真冬並み。お大師さまのご機嫌が良くない証拠。


太山寺の仁王門。全部で8本の丸い柱で支える八脚門という形式。国の重要文化財らしい重厚な建造物。


入母屋造り本瓦葺きの太山寺の本堂は国宝。入母屋造りはもっとも格式が高い建物の形式として重んじられた。瓦葺きの入母屋は、法隆寺金堂や平安神宮大極殿のほか、各地の城郭建築でも見ることができる。


太山寺から円明寺に向かう途中の道路標識。いよいよ3月のお遍路ードも最終コーナーに突入である。


円明寺の山門。太山寺に比べるとずいぶん小さくて質素だがかわいい。


円明寺の本堂。こちらもかなりコンパクトでかわいらしいサイズ。でも中には行基作の御本尊、阿弥陀如来像と左甚五郎作の龍の頭を刻んだ鴨居が安置されている。


円明寺を打ち終えてJR伊予和気駅から松山駅まで列車に乗ったのだが、伊予和気駅舎のモダンなこと。きっと駅舎ファンには人気があるはず。なんか得した気分。


1週間で集まった札所の墨書と朱印はなんと8つ。3月は今まででいちばん効率のいいお遍路だった。46番浄瑠璃寺(右)と47番八坂寺(左)。


48番西林寺(右)と49番浄土寺(左)。


50番繁多寺(右)と51番石手寺(左)。


52番太山寺(右)と53番円明寺(左)。


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