Let’s go o-henroad! 「お遍路ードプロジェクト」について

57日目「道後温泉に泊まって、湯あがり遍路で石手寺へ」(2015年3月9日)

歩数  12562歩
距離  9km
消費カロリー  381kcal

 今日もまた、前夜の夜遍路の話からである。「歩き遍路なのに夜遍路ばかりしていていかがなものか」とのお叱りはごもっとも。うちの奥さんからも連日厳しいLINEメールが届いている。
 しかし、これは今回のような都市滞在型遍路では避けられない構造的なモンダイであり、宿命でもある。また読者もそれを期待していると思うので、我々もやむを得ず楽しい夜遍路をしているのだということを、特に竹内記者の所属する新聞社の上司の方々を中心にご理解いただきたいと思う(少し苦しい弁解です)。
 昨晩の夜遍路は竹内記者が前から一度訪ねてみたいと熱望していた、松山市二番町の居酒屋「たにた」。居酒屋といってもかなりレベルの高い店だということは、店の雰囲気と女将さんのきりりとした応対ですぐわかった。
 四季を通じて瀬戸内海でとれる新鮮な魚介を出す店らしい。今日は我々の他に高知大学の塩崎俊彦先生も一緒である。塩崎先生はこの春からスタートする新学部「地域協働学部」の教授で、俳句研究の専門家。黒ちゃんのしつこい誘いを断りきれず、2日間だけお遍路に同行することになったのだが、俳人・正岡子規の地元松山を歩くのに、これほど適任のゲストウォーカーはいないだろう。
 「松山といえばオコゼ」と脳にインプットされている黒ちゃんは、オコゼのうす造りと中骨の唐揚げをいただき、いも焼酎のお湯割りで気持ちよく酔って道後温泉の宿に戻った。

 朝6時、アイホンのアラームがけたたましく鳴った。宿のすぐ前の銭湯「神の湯」は朝6時から入れる。週末の昼間は観光客で行列ができるという人気湯ゆえ、朝風呂を狙うためだ。
 1階の広い脱衣所で裸になり引き戸を開けて浴場に入るとき、その横の紛らわしい位置にもうひとつ引き戸があるのに気がついた。そしてその前に「ここは出口です」の大きな看板が…。裸で満員御礼の廊下に飛び出す人がいるんだろう。うっかり世代の黒ちゃんとしては笑い過ごせない看板である。

 今日は荷物を宿に預けて空身で歩くことになった。ルートは昨日参拝を終えた繁多寺→石手寺→子規記念博物館→宿の10km弱のコースである。今日のお寺はひとつだけだ。1日に訪ねる寺の数が多いと大変だということが昨日の「1日4寺芋づる式遍路」でわかった。これからは「1日20kmまで&1日1寺まで」ルールにしようと竹内記者に提案するつもりである。まあ「羹に懲りて膾を吹く」ような提案だけど。
 朝風呂で火照った体のまま繁多寺前から歩き始める。風がめちゃくちゃ気持ちいい。竹内記者は昨晩入ったので「湯あがり遍路」の快感は黒ちゃんだけである。むふふ、これって病みつきになりそう。歩き遍路の皆さん、道後温泉泊まりの湯あがり遍路、絶対おすすめです(ただし、湯冷めにご注意)。

 松山の市街を眼下に見ながら閑静な住宅街の中をぶらぶら歩く。空身なので歩き遍路というよりは散歩である。荷物を背負っている時より歩くスピードがゆっくりになる。先行する竹内記者と塩崎先生との距離がどんどん離れて、自然に「ひとり遍路」状態になる。これも妙に新鮮だ。
 湯上がり+散歩+ひとり。「ぜいたくの3重苦」じゃなかった「ぜいたくの3重奏」を味わいながら石手川のへんろ橋を渡る。川岸の菜の花の鮮やかな黄色が目に、梢からはイソヒヨドリの軽やかな歌声が耳に飛び込んでくる。松山はもう春である。

 石手寺はイメージしていたのとはぜんぜん違うお寺だった。衛門三郎の悲話(竹内記者が新聞に書いているのでここでは触れない)があるので、もう少し悲しみに満ちた寺だと思いこんでいた。
 だが日曜日ということもあって境内は観光客とお遍路さんでごった返しており「悲しみ」は境内のどこを探しても落ちていなかった。
 正式には四国霊場第51番札所・熊野山石手(いして)寺という。仁王門は国宝に、本堂、三重塔、鐘楼、銅鐘、護摩堂、鬼子母神、五輪塔は国重要文化財にそれぞれ指定されている。御本尊は行基が開眼したと伝えられる薬師如来である。

 浅草寺のような雑踏の境内で納経を済ませ、道後温泉の近くに建てられた「松山市立子規記念博物館」に向かって歩く。その途中、東京に帰る正岡子規へ夏目漱石が贈った送辞の句碑があった。
 「御立ちやるか  御立ちやれ  新酒菊の花」
 漱石と子規の友情物語は哀しくも清々しい。ランチのあとに一緒に歩いている高知大学の塩崎先生に子規記念博物館で詳しく解説してもらうことにしよう。この詳細は明日書くことにする。

石手寺までのぶらぶら遍路で一句
〈湯あがりの  へんろ岸辺に  菜花咲く〉
黒笹慈幾


前夜の夜遍路は松山市二番町の居酒屋「四季瀬戸の味 たにた」で。


黒ちゃんが頼んだオコゼの薄造り。


居酒屋「たにた」の締めはメニューのジャコ飯。カリカリの歯ごたえのジャコとゴマが食欲を掻き立てる。


石手川の土手は菜の花の明るい黄色に埋まっていた。対岸の梢からはイソヒヨドリの軽やかな歌声が聞こえてくる。


国宝に指定されている石手寺のこの仁王門には、たくさんの反戦系の立て看板が立てかけられていた。黒ちゃんが青春を過ごした時代の大学構内を思い出した。


まるで浅草寺の仲見世のような石手寺のお土産やさんストリート。屋根付きの全天候型。


石手寺境内にある松尾芭蕉の句碑の入り口は、こんな感じに繁茂した植物で塞がれてしまっていた。


納経帳に慎重にゆっくりと墨書していただいた。後ろには納経者の長い行列ができても動じることなく、自分のペースで書いてくれた。文字も美しい。


仲見世で売られていたおやき。石手寺名物のスイーツで、バラ売りは2枚からOK。素朴な味が魅力かも。


子規を東京へ見送った時の夏目漱石の心のこもった送辞。国道187号線沿いの石碑に刻まれていた。


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