Let’s go o-henroad! 「お遍路ードプロジェクト」について

53日目 「納経帳を忘れたごほうびか。感動の岩屋寺再訪」(2015年2月14日)

歩数 6,074歩
距離 4.3km
消費カロリー 150kcal

 今日はまず最初に、岩屋寺の「打ち戻り」のために連泊した久万高原町下畑野川のへんろ宿「いやしの宿 八丁坂」のことを書こうと思う。45番札所・岩屋寺を目指す歩き遍路さんにぜひオススメしたい「気配りの宿」だと思うから。
 一昨日、大宝寺参拝を終えた足でこの宿に着き、部屋に案内され靴を脱いでいるとすぐ傍にビニールに包まれた古新聞紙の束が置かれている。上になにやら書いてある。
 「古新聞です。濡れた靴の中へお入れください」
 黒ちゃんも一度経験したことがあるが、歩き遍路でいちばん嫌なのが雨遍路をして靴の中に水が入ること。次の日のこともあるので一刻も早く乾かしたい。そんなとき、クシャクシャに丸めた新聞紙を中にぎゅうぎゅう詰め込んでおくと早く水気が抜ける。
 以前、国民宿舎に勤務していたとき、濡れて到着されたお遍路さんがいつもフロントで『新聞紙ありませんか』と聞かれるので、それならば最初からご用意しておこうと思いまして」と、宿の女将の大野愛子さん。こんな小さな気配りでも疲労困憊してたどり着くお遍路さんにとってはなによりの「お接待」になる。大野さんは先達(せんだつ)でもあるので、お遍路さんの「ニーズ」をよく知っているのだ。
 大野さんならではの気配りはこの宿のあちこちに散りばめられている。以下、列挙してみる。
1.各部屋にウオシュレット・トイレ設置 → 年配のお遍路さんは洋式トイレが楽だから。
 女性はウォシュレットがないと困るから。
2.男女別の大浴槽のお風呂 → 着いたらすぐお風呂に入り、その間に脱いだ衣類を洗濯・乾燥できるから。
3.洗濯機と乾燥機をそれぞれ3台設置 → いつでも待たずに衣類を洗濯、乾燥ができるように。
4.夕食の献立に「とんかつ」を入れてある → 「遍路ころがし」の難所を歩いてきたお遍路さんのカラダがそろそろ肉類を欲しがるころだから。
5.宿泊客以外も利用できる無料ロッカーを入口脇に設置 → 岩屋寺に「打ち戻る」お遍路さんが荷物を置いて「空身」で参拝できるように。
6.岩屋寺までの八丁坂越えルートの写真入りアルバムを常備 → この先のおへんろ道の状況をなるべく正確に伝えたいから。
7.ふかふかの毛布と羽毛かけ布団常備 → お遍路さんにとって快適な睡眠が最優先だから。

 どうです、素晴らしい気配りでしょ。黒ちゃんは話を聞いていて大いに感動し、高知の遍路宿にもこのお接待の精神を学んで欲しいと思った。小野さんは開業前に3年ほど岩屋寺近くの「国民宿舎 古岩屋荘」の経営に加わり、お遍路さんの気持ちに寄り添う経営ノウハウを育み、理想の遍路宿のイメージを固めて「いやしの宿 八丁坂」を開業したのだという。あっぱれである。

 さて。昨日の岩屋寺参拝の折に納経帳を忘れ、大いに萎れて宿に帰ってきた竹内記者のその後の様子だが…。浮かない顔のまま口数も少なく夕食の箸も進まない。大好きな生ビールも一杯だけで終わりである。このまま納経帳が白いまま高知に帰っても、仕事が手につかず会社に迷惑をかける恐れがある(笑い)。結局、黒ちゃんの提案で「明日の朝、早起きして、もう一度岩屋寺に行こう」ということに落ち着いたのである。

 そして今日、竹内記者と黒ちゃんは、生まれたばかりの朝の光を浴びて佇立する岩峰とその直下にキラキラ輝く岩屋寺の大伽藍を前にして言葉を失っていた。なんという美しさだ。参拝客はまだ見えず、いまこの荘厳な空間に身を置くのは我々だけ。耳に届くのは手水舎の水音と野鳥の声ばかりである。
 遠い昔、法華仙人や弘法大師が修行の場としてこの岩屋の地を選んだ理由はこれだったのだ。今にして思えば昨日の竹内記者の「納経帳うっかり忘れ事件」は、今日のこのサプライズのための伏線だったのである。またまた熟達のツアーコーディネーター、お大師さまの術中にはまってしまった黒ちゃんと竹内記者でありました。

 念願の納経を済ませ、鐘楼で鐘を撞いて下りてきた竹内記者の顔が見事なまでに晴れ晴れとしている。今まで50日以上寝食を共にし歩いてきて(いや寝は別だったけど)、こんなに晴れやかな顔は見たことがない。「昨日の萎れた竹内君、どこいっちゃったの」である。
 そしてここで、彼の口から驚愕の一言が放たれたのである。  「お遍路はここで終わりにしましょう。これ以上歩いてもこの感動を損なうだけです」

 ありゃありゃ。というような経緯があって、次のお遍路のために三坂峠までは歩いておこうという当初の計画を変更し、2月のお遍路ードは岩屋寺で終了、今日の感動をそのまま高知に持ち帰ることになった。もちろんこの計画変更、黒ちゃんも大賛成である。竹内君、なかなか機転がきくじゃないの。さすが寺田寅彦記念賞!(カンケイないか)

〈翌朝の岩屋寺再訪で一句〉
納経を 忘れて嬉し 打ち戻り
黒笹慈幾

 ここまでの黒ちゃんのブログ「釣りときどきお遍路」日記のご愛読ありがとうございました。次回は3月中旬、久万高原町から46番札所・浄瑠璃寺に向けて歩き始める予定です。


納経所でいただいた44番大宝寺(右)と45番岩屋寺の墨書と朱印。お遍路さんの「歩くモチベーション」を高める重要なアイテム。お遍路さんがこれを忘れることは普通はありえないんだけど(笑い)。


「いやしの宿 八丁坂」の外観。久万高原町から岩屋寺に向かう県道12号線沿い、ほぼ中間地点にある。


「いやしの宿 八丁坂」の部屋に入って、まず驚かされたのがこの古新聞のお接待。いきなり参りました。


宿の夕食。量も品目も多くて、しかも美味しい。歩き遍路さんのパワー充填には充分な内容。とんかつは必ず付いて好評のようだ。


宿の入り口脇に設けた無料ロッカー。打ち戻りのお遍路さんの荷物を軽くしてあげようという配慮。宿泊客でなくても使える。


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