Let’s go o-henroad! 「お遍路ードプロジェクト」について

52日目 「いよいよ岩屋寺へ。八丁坂越えの表参道ルートで修験者になった気分」(2015年2月13日)

歩数 13581歩
距離 9.7km
消費カロリー 381kcal

 朝からパラパラと小さな雨つぶが落ちている。今日の目的地は45番札所・岩屋寺である。いよいよ2月のお遍路ードのハイライト「八丁坂越え」の日がやってきた。出発前に「いやしの宿 八丁坂」の女将の大野愛子さん(67歳)に遍路道の様子を取材する。大野さんは先達(せんだつ)の資格も持つお遍路の先輩である。これからたどる予定のお遍路道のディテールに詳しい。以下、一問一答形式でその臨場感をお伝えする(笑い)。

「八丁坂の登りは厳しいですかね」
「はい。登り口から一気に山の尾根までの直登ですね」
「うーむ、やっぱり!」
「登り切ったらそのまま尾根伝いに登ったり下ったりでしばらく歩きます」
「ほほう、今度は縦走か」
「途中、石鎚山が望めるポイントもありますね。今は雪をかぶって真っ白です」
「むむむ、北アルプスか」
「下り始めると途中に遍割(セリワリ)禅定と呼ばれる弘法大師の修行場があります」 「うおっ、昨日久万美術館で見た白山権現を祀るあのセリワリだ」
「ええ。もっと下ると最初に仁王門が現れます」
「ふぅー」
「八丁坂越えルートが昔からの岩屋寺参拝の表参道です。だから仁王門の方が上にあります」
「なーるほど」
「裏参道の下から上がってきた参拝客は本堂→大師堂→仁王門の逆順になるんです」
「なるほどなるほど」

 これって、八丁坂越えで難儀をしてくる歩き遍路さんを「えこひいき」じゃなかった「リスペクト」するシステムじゃないの。嬉しいねえ。でも、まあ、江戸時代には車遍路はなかったので、八丁坂越えがメインルートだったというだけなんですがね。それでもお参りする前からなんとなく岩屋寺が好きになってしまう黒ちゃんです。

 じつは昨晩、我々は久万の町中の焼肉店「ちぐさ」で久しぶりの肉食をしながら、翌日の八丁坂越えに備えて「空身」での岩屋寺参拝を決めていた。「いやしの宿 八丁坂」のある久万高原町下畑野川から岩屋寺までを往復し、そこから三坂峠を経由して46番浄瑠璃寺に下るのが通常のお遍路コースである。そのため、宿に荷物を預けて空身で岩屋寺まで往復する「戻り打ち」の歩き遍路さんも多いと聞いていたので、我々もその手を使おうということになったのだ。
 そういえば我々は前に二度、空身遍路を体験している。去年5月の35番清瀧寺、12月の41番龍光寺と42番仏木寺参拝のときである。

 午前9時半に宿を出発して八丁坂の登り口まで、ゆるい登り勾配の山道を1時間歩いた。それからの八丁坂越えは確かにしんどかった。空身なのに息が切れる。登りの時間はわずか30分ほどだが、とにかくものすごい急斜面の直登である。一昨日の鶸田越えを楽々とこなした体調万全の黒ちゃんにして「ゼイゼイ」と苦しい音を発しながらの登りとなった。
 しかし、登ってしまえば大野さんの予告通りの素晴らしい尾根の縦走路である。途中、お大師さまの演出だろうか、突然の吹雪に襲われるという事件もあったが、無事に岩屋寺の上からの表参道口に到着した。そして急な下り道をセリワリ禅定→仁王門→大師堂→本堂の順で参拝を済ませたのがちょうど12時であった。

 切り立った巨大な岩峰の一部を穿って、その岩盤の内部に食い込むように作られた本堂の威容にまず度肝を抜かれた。お大師さまはとんでもない大工事をなさったものだ(調べてみると本堂は1898年に一度消失し、現在のものは昭和2年に再興したものだという)。お大師さまが修行に来る前にすでにこの地に籠って修行していたという、土佐の女性修験者・法華仙人のエピソードも凄まじい。法華仙人はお大師さまの目の前で「セリワリ禅定」の「岩盤真っ二つ割りを」実演したという伝説の修験者である。
 「いやしの宿 八丁坂」の大野さんによると、大師堂の方が本堂よりも大きくて立派なのは45番岩屋寺と75番善通寺だけだという。岩屋寺の「大師信仰」のつよさ、深さを物語る。ちなみに寺の正式名称は「海岸山岩屋寺」ご本尊は不動明王である。

追伸
 今日の竹内記者は、とんでもない大失敗をやらかした。「空身遍路は忘れ物に注意すべし」というルールを二人で確認していたのに、大師堂の前で初めてそのことに気づいたのだという。納経帳を忘れたのである。ご愁傷さまと言うしかない。納経をできずに宿に戻ってきたその後の竹内記者の様子といったら…。気の毒すぎてどうしても書けません。

岩をも穿つ信仰の力に触れて一句
〈セリワリの 修験の力 我に欲(ほ)し〉
黒笹慈幾


「いやしの宿 八丁坂」の女将さんにこれからの八丁坂越えの情報を教えてもらう。写真付きの解説は完璧でした。ありがとうございます。


八丁坂越えの遍路道に掛かっていた激励札。水前寺清子さんもこの坂を越えた?(笑い)


急な登りをなんとか這い上がって八丁坂上に到着。昔はこんなところに茶店があったんだ。急に温かいコーヒーが飲みたくなっちゃった罪作りな看板です。


これが八丁坂の頂上らしい。ここから岩屋寺上までは尾根伝いにまだ1時間ほど歩く。


岩屋寺までの尾根道は、このように馬の背になったところも幾つかあった。木の根が絡み合って遍路道をしっかり保守してくれているようだ。




もうすぐ岩屋寺の上に到着かなというあたりで急に空が暗くなり、吹雪になった。お大師さま、「遊び」がすぎますよ。


セリワリ禅定の入り口。社務所で鍵をもらって扉を開けて入るらしい。急な岩場の鎖場や階段を上り詰めた先に「白山権現」を祀る社があるという。


セリワリ禅定の看板。竹内記者か「足場が濡れていて鎖場はかなり危険です。やめてください」と必死に止めるのでセリワリ探検は、今回は断念。暖かい季節にまた来ようと思う。


岩屋寺の大師堂。大きく張り出した屋根、ギリシャ神殿風のエンタシスのある柱など意匠を凝らした立派な造りである。


垂直の岩壁直下に建てられた本堂の屋根の一部は、まるで岩盤に突き刺さっているかのよう。信仰の力、修験者の念が岩を貫いているようだ。


本堂脇の急なハシゴを登ると、洞門に作られた展望台に上がれる。高所恐怖症の黒ちゃん、必死の撮影です。
竹内記者は平気のようです。


ハシゴの上の展望台からの下界の眺めはこんな感じです。


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