Let’s go o-henroad! 「お遍路ードプロジェクト」について

45日目「昨日笑って今日泣いて。2日連続のヒザ受難」(2015年1月24日)

歩数 39484 歩
距離 28.4 km

 昨日の晩酌は宇和町卯之町の居酒屋「わらぐろ」で生ビールと地元の魚介を使った酒肴を堪能した。真珠貝柱のフライ、エソの子ども(地元ではボラメと呼ぶ)の南蛮、キビナゴの佃煮など、西宇和のテロワールの一端に触れることができた。ふらっと気まぐれに入った居酒屋で、こんな佳肴と出会えるのも夜遍路ならではの楽しみといえる。「楽しいお遍路は、楽しい夜遍路があってこそ」(お大師さまお許しください)なのである。

 「今日の行程はちょっと長めだけど、平坦なルートだから大丈夫でしょう」という竹内記者の机上ブリーフィングで始まった今日の目的地は、20kmほど先の愛媛県大洲市街である。朝8時に宿を出発してすぐ「うっかり世代代表選手」の黒ちゃんが携帯を忘れてUターンするという小さな事件はあったが、お遍路2日目は、まあまあの順調な滑り出しだった。
 大洲といえばNHKの朝の連続テレビ小説「おはなはん」の舞台になった町である。「樫山文枝のエクボ、可愛いかったなあ」と竹内記者に同意を求めると「なんですかそれ?」という顔をする。あの大ヒット作のヒロインを知らないの?
 ネットで調べてみると1966年4月に放送開始とある。聞けば竹内記者は1968年生まれ。まだ生まれていない。しかし、世代としては知らなくて当たりまえだろうが、新聞社勤務なんだからおはなはんのヒロインが樫山文枝であることくらいの基礎知識は持っておいて欲しいものである、口には出さなかったけど(笑い)。ちなみにその当時、黒ちゃんは16歳の青春をめいっぱい謳歌しておりました。

 さて。国道56号線を歩き始めて1時間ほど、我々は鳥坂(とさか)峠の入り口に達した。国道はこの先、鳥坂トンネルを貫通して札掛を経由し、大洲市街に至る。竹内記者のブリーフィングではトンネル内を通過する予定だったが、いざ迂回路の鳥坂越えの看板を前にして迷った。歩き遍路の心を迷わせる極めて悩ましい表記だったのである。
 曰く「この先、鳥坂トンネル。トンネル内歩道狭し。ここから 峠道(へんろ道) 5.5km 約60分、56号(トンネル利用) 2.1km 約25分」
 今日の行程は長いから無理せずトンネル内を歩こうと考えていた我々は、あまりにも親切で痒いところに手の届いた、いや、ありがた迷惑な道案内に心を激しく揺り動かされて、改めて決断を迫られたのである。
「楽だけど楽しくない道を行くか、楽じゃないけど楽しい道を行くのか?」と。
「歩き遍路として3.4km35分の寄り道を惜しむのか、受け入れるのか?」と。
まさに人生の岐路、じゃなかった歩き遍路の岐路である。看板の前で「うーむうーむ」と10分は唸っただろうか。ついに我々は前に一歩を踏み出したのである。歩き遍路の良心(笑い)に従い、2日連続の峠越えへと。

 鳥坂峠越えは前日の歯長峠ほどではなかったが、黒ちゃんのヒザに2日連続のダメージを与えるに充分だった。国道56号線に復帰して1時間あまり、大洲市街目前でヒザがキリキリと悲鳴を上げ始め、太腿もパンパンに張ってきた。こいつは本当にやばい。「遍路の良心」の代償はやっぱり大きかった。
「前の日は大笑い、今日は大泣き」の黒ちゃんのヒザである。明日は大丈夫だろうか。

〈ホテルでヒザをさすりながらの一句〉
朝ドラの 年の差遥か おはなはん
黒笹慈幾


卯之町でふらりと立ち寄った居酒屋「わらぐろ」。夜遍路の楽しみのひとつは、一期一会でこんなお店に出会えること。


この時期、この場所でなければ巡り会えないテロワールの佳肴、真珠貝柱のフライ。コリコリと歯ごたえのある食感、貝特有の香りと旨味が口中に広がる。


おかみさんがサービスで出してくれた真珠貝柱のバター焼き。フライよりも貝の香りが立っていた。


左がボラメ(エソの子)の南蛮、右はキビナゴの佃煮。ともに濃いめの味付けで、ビールのアテにぴったり。


大洲への道すがら、住宅街を抜けるとあちこちの庭に蝋梅の花が咲き始めていた。春よ来い。早く早く!


宇和町で見つけたお地蔵さんはまだ冬支度。くまモンのよだれかけがあまりにも可愛いので、ついシャッターを切ってしまいました。地元の人たちの信仰心の厚さがうかがえる。


鳥坂峠まで3.9kmの道標。峠の入り口で悩ましい選択を強いられることになるとは、このときは思いもよらなかった。


江戸時代、西予市側の鳥坂峠の入り口に設けられていた代官所跡。当時は人や物は全てこの峠を通っていたという。


鳥坂峠を越えてすぐの山道の途中にあったなにやら怪しい構造物。解説看板には「日天月天様」と書かれてあった。恐る恐る奥に進むと手前の建物の奥にさらに小さな祠が…。


祠の中の御神体は太陽なのか、月なのか判然としない、まあるい石板。日の差さない真っ暗な空間で不気味な存在感を発していた。黒ちゃんは勝手に「鳥坂峠のパワースポット」と認定しちゃいました(笑い)。


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