Let’s go o-henroad! 「お遍路ードプロジェクト」について

27日目「滑り込みセーフ!奇襲作戦は大成功」(2014年9月25日)

歩数 29183歩
距離 21km

中国に上陸した台風16号が偏西風に乗って急に東に向きを変えた。心配していた雨がいよいよやってくる。間の悪いことに、今日のお遍路の行程は20km近くあるのに加えて、海岸沿いを歩く。以前、海からの横なぐりの雨の中を歩いて難儀した佐賀→入野間を思い出した。あのときの「雨遍路」はつらかった。ふたりの口からいつもの軽口がぜんぜん出てこなくて、ただひたすら黙々と歩いたっけ。
「雨まじりの風に吹かれるとつらいなあ」ということで意見が一致した竹内記者と黒ちゃん、雨がくる前に今日の歩きを終えてしまおうという奇襲作戦を立て、朝6時半に朝食を済ませ、7時10分に「民宿叶崎」を出発した。ま、ふつうのお遍路さんの場合は奇襲でもなんでもないんですがね(笑い)。
 西の空はぼんやりとした鉛色で、暗くはないが明るくもない。今すぐに雨がこぼれてくるという雲行きではないが、なんとなく気が急いて足の運びが早くなる。足摺岬灯台よりも古いという叶(かなえ)崎灯台見学もそこそこに、国道321号を大月方面に進む。短いトンネルを幾つか抜けると小才角(こさいつの)の集落、ここからは大月町に入る。7月のお遍路ードからずいぶん長逗留をしていた土佐清水市とは、ここでお別れである。泥ちゃん、いろいろお世話になりました。また来ますね。

 叶崎→小才角と海岸沿いを歩いてきた我々は、次の大浦港で国道と別れ、四国88箇所霊場番外札所月山(つきやま)神社に至るルートに針路をとった。途中「→遍路道」という手書き看板に久しぶりに出会ったので、車道を離れてこちらに進む。細くて勾配のきつい山道を登り、お墓の脇を抜けてしばらく高度を稼ぐと、大浦の港と集落が一望できる高台に出た。大浦湾の向こうに先ほど我々が歩いてきた国道321号が遠望できる。
 月山神社までの3kmあまりの遍路道は、一度車道を横切っただけで、ひたすら人だけが通れる細くて薄暗い山道を辿る。通る人が少ないのか、女郎蜘蛛の巣が何度も行く手に立ちはだかってうるさいので、杖代わりのトレッキングポールをブンブン振り回し、蜘蛛の巣を払いながらの前進だ。
 ところどころに「おへんろさん、がんばって歩いてください」「おへんろさん、いろんな国をまわってください」などという幼い字で書かれた小札がぶら下げてあり、心が和む。そういえば、しばらく使われていなかった遍路道を「大月へんろみち保存会」が40年ぶりに再整備して、地元大月の小学生たちが手作りの「道しるべ札」を下げたという新聞記事を読んだ記憶がある。
 小1時間ほど遍路道を歩いて月山神社到着。縁起によると元は月光院南照寺として神仏混合の霊場だったのが、明治元年に月山神社と改称されたという。神社の御神体が月形の石であることからこの名がついたとある。本殿の脇に少し小さめの大師堂があることから、神社でありながらも番外札所になっているのだろう。納経帳も持たずにきた今回のお遍路ードだが、ここだけはお祈りモードに切り替えて、ふたりで静かにお参りをさせていただきました。あ、もちろん、お賽銭も本殿と大師堂の両方に奉じました。

 月山神社から今日の目的地「ホテルベルリーフ大月」までは、多少距離が長くなっても眺望のいい海岸線を歩きたいと考えていた。そこで月山神社→赤泊の浜→赤泊→西泊→樫ノ浦→周防形というコース設定にしたのだが、これが大正解だった。
 月山神社を出発して赤泊の浜方面に進むと程なく、また「→遍路道」の看板が現れたので、迷わず車道を外れ、山道に突入した。またまたちょっとずつ違う小学生たちの手書きの激励札を楽しみながら、急勾配の遍路道を30分ほど転がるように下るうち、はるか下方から潮騒が聞こえてきた。さらに高度を下げていくと徐々に潮騒のボリュームが大きくなってきて、突然視界が開けた。ブルーの海と、白い波が打ち寄せる大石ゴロゴロの海岸が、目に飛び込んできた。これが赤泊の浜であった。
 暗くて長い急勾配の、足元もおぼつかない暗い遍路道をしばらく歩かせておいて、突然目の前に美しいブルーの海と荒波打ち寄せる海岸を用意するなんて。お大師さまって、なかなかニクい演出をするなあ。これって手練れの観光コーディネーター級の大ワザだ(笑い)。まあ、1200年間続いてきた四国88箇所霊場巡礼そのものが、今となってみれば四国の海・山・川の大自然を使った壮大な「観光システム」と言えなくもない。弘法大師・空海がもし現代に生まれていたら、さぞかし優秀な観光プロデューサーになっていたことだろう。

 赤泊の浜から西泊、樫ノ浦を経由して周防形のベルリーフ大月には、ちょうど正午に着いた。ホテルの食堂で黒ちゃんが和風ハンバーグ、竹内記者がカレーを食べ終わるのを待っていたかのように大粒の雨が落ちてきた。滑り込みセーフ! 本日の奇襲作戦は見事に成功したのである。エッヘン。

蜘蛛の巣と 一緒にのぼる 月山路
潮騒に 呼ばれてくだる へんろ道
黒笹慈幾




遠く、突き出した岬に白く見えるのが叶崎灯台。


小才角の国道沿いでスルメを売る店を経営している二神さん。今回の宿探しでお世話になったので、ひとことご挨拶を。


大浦の港の入口に立つ「番外霊場月山神社」の案内看板。手書きなのが妙に誘われる。


大浦の集落の中で見つけた「へんろみち」の看板。迷わず車道からこっちへ。


大浦の集落と港。湾の向こうにサニーロードこと国道321号線を望む。


遍路古道を歩くと、こんな手書きの激励札が次々に現れて、和ませてくれる。


40年ぶりに復活なったという「大月遍路古道」は、こんな感じの山道。


突然尺貫法を持ち出されても、すぐには反応できません(笑い)。


月山(つきやま)神社の縁起。


月山神社の本殿にお参り。静かな境内にお賽銭の音が響いた。竹内記者は何を祈るのか。


にわかに蜘蛛の巣払いに変身したトレッキングポールの先はこんな状態。


暗くて急な遍路古道の山道から突然、明るい海岸に出た。心憎いお大師さまの演出である。ここが赤泊の浜。


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