社員紹介


「高知が好き」を支える力に  

        佐川支局長   森田千尋


 小さい頃から、さまざまな視点から知らない世界を見せてくれる新聞が好きでした。自分も伝える側になりたいと思い、高知新聞社に入りました。


 集落を盛り上げようと道沿いに花を植えるおじさん、患者さんを癒やすアート作品を作る病院職員、珍しい色のカエル…。紙面に載るのは、社会を揺るがすような事件ばかりではありません。入社した当初は「これがニュースになるんだ」と驚くこともありましたが、身近な出来事をきめ細かく伝えることが地方紙の大切な役割です。それに気付かせてくれたのは、取材先の人々でした。


 近い将来起こるとされる南海トラフ地震。高知県は大きな被害が予想されています。幡多支社で地域の被害想定や防災対策について報じた時、「怖いことばかり書かれると憂鬱。逆に生きる気がしなくなる」というご意見を何度かいただきました。


佐川支局長・森田千尋 どうしたらいいか悩んでいた時、港町の小学校を取材しました。そこは地震による津波で浸水が予測される地域。校長先生は毎週避難訓練を行い、子どもたちの危機意識を高めようと「これじゃ逃げ切れんぞ、もっと早く走れ」と急かしていました。しかしある日、朝日にきらめく海を見て「自然は時に牙をむくけど、普段はその恵みで生かされている。今のままでは子どもたちが地域を嫌いになってしまうかも」と反省し、危険性だけでなく地域の素晴らしさや海の恵みも伝えるようにしたそうです。


 その話を聞いて、地方紙も同じだな、と気づきました。大きな事件や不正の報道も、小さな生活の積み重ねを大切にするからこそ生まれる悲しみや憤りの上に成り立つもの。地域で頑張る人の姿やくすっと笑える出来事をきめ細かに伝えることで、「高知っていいところだな」「ここで暮らしたいから頑張ろう」と思ってもらえたらいいな、と考えながら取材をしています。


 記者は、自分の経験や感覚全てが生かせる仕事です。自分が面白いと思ったこと、胸を打たれた瞬間、憤りや違和感。それが取材のきっかけや記事を書く時の視点の置き方につながります。力不足を感じることはしょっちゅうですし、時には体力的、精神的につらいこともありますが、それを上回る面白さも感じることができます。「知る」「伝える」ことに興味がある方は、未来の選択肢の一つに加えてもらえたらと思います。