社員紹介


「心に突き刺さる見出しを」

        編集局編集部  森部智成


 社会部、支局勤務を経て、現在は編集部で仕事をしています。編集部(整理部と呼ぶ社もあります)は、ニュースの価値を判断し、見出しをつけ、紙面上にレイアウトする部署です。読者がパラパラと新聞をめくった時に「おっ」と手を止め、じっくり読みたくなるように、工夫を凝らします。


 人の書いた記事を配置するだけの単調な仕事に思えるかもしれませんが、意外にクリエイティブな側面もあります。音楽で言えば、人の作った曲を加工したり、繋ぎあわせて魅力を引き出すDJのような感じでしょうか。


編集局編集部・森部智成  「県庁の職員がメタボ検診に向けて、ダイエットに挑戦する」という記事があったとします。普通に見出しにするなら「メタボ検診へ県職員減量」といったところでしょうか。それではやや味気ないし、目に留まりそうにありません。この面唯一の地ダネ記事。何とか目立たせようと知恵を絞ります。


 県庁の経費節減や効率化の取り組みと引っ掛けて「行政のスリム化?!」という見出しを付け加えてみるのはどうでしょう?少し印象が変わってきます。読者が「くすっ」とでも笑ってくれたらこっちのもの。そういう仕掛けを考えるのが、この仕事の醍醐味です。


 やや軽めの例えから入りましたが、ニュースとは楽しい話題ばかりではありません。東日本大震災の際には、被災者の悲しみ、苦しみ、怒り、そして希望を、どう見出しに切り取って読者に提示するかに悩みました。記者の血と汗と涙がにじむような、入魂の記事がほとんどでしたので、原稿の力強さを損なわず、ストレートに伝えることに腐心しました。


 短い言葉数で、ニュースの肝が一目で分かり、読者の心に突き刺さる見出しをいつも心掛けています。ボキャブラリーを総動員し、最も理想的な見出しをひねり出さなくてはいけません。


 こうして出来上がった紙面が、一部一部県内の読者の家庭に届きます。我が家では妻がどの面で手を止めて、熟読するかをこっそり観察しています。自分の組んだ面がものの一秒でめくられるときはガッカリです。反省し、何がまずかったのかを考えなくてはなりません。じっくり読んでくれた時はニヤリ。魚を釣り上げたような満足感が味わえます。


 偉そうなことを書いてきましたが、正直に告白すると、学生の頃は「新聞記者は文章がそこそこ書けたらできるだろう」ぐらいの激甘な考えでいました。当然そんな甘い仕事ではなく、入社11年、いまだに打ちのめされる日々が続きます。自分の勉強不足、経験不足、人間力の低さに「学生時代にもっとしっかりやっておけば」と後悔しきりです。


 みなさんは学生時代にたくさんの本を読み、映画を鑑賞し、老若男女多くの人と語り合い、いろんな土地に出掛け、人間力を高めてください。どんな仕事でも同じですが、新聞記者は特に人間力がすべてです。薄っぺらい人間にはいい仕事はできません。