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2023.06.02 08:00

【同性婚訴訟】権利擁護へ法整備急げ

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 国際社会に加え、司法の目も厳しさを増している。対応が遅れるほど、LGBTなど性的少数者は尊厳を傷つけられ、被る不利益も大きくなる。国は権利の擁護に向け、法整備を急ぐ必要がある。
 同性同士の結婚を認めない民法などの規定は憲法違反だとして、男性カップルが国に損害賠償を求めた訴訟で、名古屋地裁は明確に違憲とする判断を示した。法の下の平等を規定した憲法14条だけでなく、婚姻の自由を定めた24条の2項にも反すると大きく踏み込んだ。
 同種の訴訟は全国5地裁で起こされ、4件目の判決となる。札幌地裁は2021年3月、同性婚を認めていない法規定を憲法14条違反と初めて判断。その後の大阪・東京地裁は合憲と結論付けたものの、現行制度の不備を指摘している。今回の名古屋地裁を含め、国に是正を求める司法からのメッセージはより明確になった。
 判決は、法律婚に伴う一切の利益を同性カップルに享受させないのは、国会に与えられた立法裁量を超えるとして、憲法24条2項に反すると指摘。さらに、自ら選択できない性的指向のため、同性カップルに婚姻に関する制約を課す現状は14条違反と判断した。
 結論を導くにあたり、名古屋地裁は、近年の社会情勢の変化に焦点を当てている。判決では、世界規模で進む同性カップルを保護するための法制化、国内でも300を超える自治体に広がったパートナーシップ制度に触れた。
 その上で、同性愛者を法律婚から排除する合理性は揺らぎ、もはや無視できないと強調。伝統的家族観を重視する国民とも共存の道を探ることはできるはずだとした。性的少数者への理解が進む世論を十分に検討した判断といえる。
 一連の判決で、司法からボールを投げられた格好の国会に、こうした現状認識がどこまで浸透しているのか。疑問を禁じ得ないほど、動きは鈍い。
 日本は先進7カ国(G7)で唯一、性的指向や性自認に基づく差別を禁止する法令がない。先月の首脳会議(広島サミット)を前に、欧米など15の在日外国公館から、ビデオメッセージで差別反対と権利擁護の法整備を呼び掛けられた。
 「外圧」を受けて、LGBT理解増進法案をサミット前に駆け込みで国会提出したものの、伝統的家族観を重視する自民党保守派に配慮して与党案の表現は後退。野党案を含め3法案が入り乱れ、今なお審議入りできない状況に陥っている。
 差別禁止や同性婚の前段階である理解増進で難航するようでは、法案提出もサミットでの批判を避けるためのパフォーマンスだったとみられても仕方がないだろう。
 サミットでは議長国として「性自認や性的指向に関係なく差別のない人生を享受できる社会を実現する」との首脳声明も採択した。国は当事者の救済に向けた法整備を加速し、その責任を果たすべきだ。

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