2024年 03月29日(金)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知龍馬マラソン2024写真販売
高知新聞PLUSの活用法

2023.05.20 08:00

【LGBT法案】批判回避のポーズでは

SHARE

 LGBTなど性的少数者への理解増進を図る法案を、自民・公明両党が国会に提出した。しかし、超党派議員連盟による2021年の合意案より表現は後退し、当事者や支援者からは批判の声が相次ぐ。先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)開幕前日の駆け込み提出では、欧米からの批判をかわすためのポーズとみられても仕方があるまい。
 G7は昨年、ドイツ・エルマウサミットの首脳声明に「性自認、性表現、性的指向に関係なく、差別や暴力から保護されることを確保する」と明記した。広島サミットでもこの表現を受け継ぐ形で、人権状況の改善がテーマになっている。課題は議長国、日本の対応の遅れと言わざるを得ない。
 性的少数者への差別を禁止する法令を定めていないのはG7で日本だけだ。サミットを前に、15の在日外国公館が政府に差別禁止などの法整備を迫るビデオメッセージを出すなど厳しい目が向けられている。
 こうした「外圧」もあってサミット前の法案提出となったが、問題はその内容だろう。
 法案を巡っては2年前、野党側の差別禁止法案と自民の理解増進法案の間に開きがあり、超党派議員連盟が議論を主導。自民案に「差別は許されない」と書き込んで合意した経緯がある。その後、自民党の保守系議員が反発。党内の了承を得られず、法案は棚上げされた。
 今回も自民党内の議論が難航。保守系議員に配慮する形で、合意案から「不当な差別はあってはならない」に表現が後退した。当事者の感覚を尊重する「性自認」との文言も、心と体の性が一致しない障害名として使われる「性同一性」へと書き換えられた。
 文言を曖昧にすることで、対象を狭める意図が透けてみえる。「不当でない差別」を容認するかのような表現も、理解増進を目的とする理念法になじまないのは明らかだ。
 与党からは「立法府の合意をG7各国に示すことが重要だ」との声も聞こえるが、疑問を禁じ得ない。理解増進より一歩進んだ差別禁止を法制化している各国の議論を、こうした認識で主導できるだろうか。経緯を知る各国に、かえって日本の人権意識の遅れを印象づけてしまったのではないか。
 少なくとも自民党の消極的な対応は、性的少数者への理解が進む世間とのずれを浮き彫りにした。地方議会が理解増進や差別禁止を求め、衆院に提出した意見書は、23年だけで11都道府県の26件に上る。国政の対応の遅れに対する国内外の厳しい目を認識する必要がある。
 提出された与党案について、日本維新の会と国民民主党は共同提出に加わらず、立憲民主、共産、社民の各党は21年の合意案を対案として提出した。国会の姿勢が問われる。
 法律はポーズではない。性的少数者への理解が実際に進み、さらに差別解消や人権の擁護につながってこそ意義がある。これ以上の後退は許されない。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月