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2023.04.07 05:00

【敦賀原発2号機】原電に運営資格あるのか

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 東京電力福島第1原発事故の教訓は「二度と事故を起こしてはならない」の一言に尽きる。いくらハード面の基準を満たそうとも、運営主体にその能力がなければ国民は安心できまい。日本原子力発電の現状は、根強い原発への不信感を一層膨らませる。
 原子力規制委員会が、敦賀原発2号機(福井県)の再稼働に向けた審査を再び中断する方針を決めた。審査でずさんな管理態勢が露呈したためで、もはや原発を運営する資格があるのか疑われる事態だ。
 原電は東海第2原発(茨城県)と敦賀2号機を持つ原発専業の卸電力会社。東海第2は2018年に最長20年の運転延長が認可されたが、実効性のある住民避難計画を策定できず、地元同意が難航している。敦賀2号機の再稼働は企業として死活問題といってよいが、そのハードルは極めて高い。
 規制委の有識者調査団は15年、2号機の直下に「活断層」があるとする評価を確定させた。新規制基準では活断層上に重要施設を建てることを禁じており、原電は審査で反論を続けてきた。
 だが、その審査過程で別の重要な問題が浮上した。原電の管理態勢である。19年には地震や津波対策に関する審査資料で千カ所以上の記載不備が見つかった。
 さらに20年2月には地質の資料で原電による無断書き換えが判明。審査が約2年間中断した。再発防止策が整ったとして審査は再開されたが、またしても地質の観察場所を間違えるなど訂正が相次ぎ、実質的な審査ができない状況に陥った。
 ここまでずさんな管理態勢が続けば、もはや企業体質の問題にほかならない。規制委もいったんは審査打ち切りを検討するなど厳しい姿勢をみせたが、法的な根拠がなく、再び調査中断を決定。行政指導として8月末までに、審査申請書の一部補正を求めた。
 規制委の判断は当然だが、こうした経緯をみれば、原発再稼働への疑問が浮かぶ。審査で設備面の安全性が確保されたとしても、ずさんな組織に運営されれば、安全とは言いがたい。原電だけではない。
 事故の当事者である東電は、柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)で核物質防護のずさんさから、事実上の運転禁止命令を受けている。体質改善が進まない限り、住民の生活には不安が付きまとう。
 さらに、老朽原発への懸念も生じる。政府は今国会に、60年を超える原発の運転を可能にする改正案を提出。可決されれば、原電のようにずさんな対応で審査が長引いた原発ほど老朽化しても運転できることになる。規制委員の一人も「安全側への改変とは言えない」と見直しに反対している。
 岸田政権は脱炭素化を旗頭に、従来の「依存度の低減」から「最大限活用」へと原発政策を大きく転換したが、このままで国民の不安を払拭し、理解を得られるのか。国会でしっかりと議論する必要がある。

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