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2023.03.24 08:00

【WBC3度目V】「侍」が見せた団結と信頼

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 長い日本野球の歴史に輝かしい一ページが刻まれた。第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は日本が決勝で米国を破り、3大会ぶりに世界一を奪還した。
 日本代表の進撃に、列島は連日盛り上がり、社会全体を明るく照らした。希望や勇気を得た人も多いことだろう。重圧をはねのけた「侍ジャパン」に敬意を表したい。
 優勝は第1回、2回に続いて3度目だが、大会は回を重ねるごとに出場選手、チームのレベルが上がっている。決勝の相手の米国は大リーグのスター選手ばかりだった。その中で勝ち取った3度目の優勝には、過去2回とはまた違う価値や意義も見いだせよう。
 今回、栗山英樹監督率いる日本代表は、大リーグで活躍する大谷翔平選手をはじめ、評価の高い選手が集い、最強布陣と言われた。期待通り大谷選手は強力にチームをけん引し、他の選手のパフォーマンスも目を見張るものがあった。チーム力はトップクラスだったに違いない。
 ただ、それだけで頂点までたどり着けたわけではあるまい。団結し、周りを信頼し、諦めずにつないでいく―。そのような日本ならではの姿勢も大きかったのではないか。
 象徴するのが準決勝のメキシコ戦だ。流れが悪く劣勢が続いたが、諦めず、後ろにつなぐ意識で食らいつき、最後は不振にあえぐ主砲、村上宗隆選手が決勝打を放った。
 決勝打は、村上選手に対する栗山監督の「揺るぎない信頼」から生まれた。選手を全面的に信じて力を引き出す栗山監督の采配もまた、快挙の一因だろう。
 チーム最年長となる大リーガーのダルビッシュ有投手が早々にチームに合流し、若手と打ち解けるなど雰囲気づくりに努めたことも大きかった。多様性の社会を反映するように日系米国人の大リーガー、ラーズ・ヌートバー選手も招集され、チームに新風と明るさをもたらした。
 これまでの日本代表は、国民の大きな期待を受けて悲壮感も漂わせていたが、今回はムードの良さが特徴的だった。それが強さにもつながったと言える。
 野球関係者には朗報だ。メキシコ代表監督が、熱戦となった準決勝を「今夜の勝者は野球界だ」と振り返ったように、野球の醍醐味(だいごみ)や魅力を存分に発信できた。
 少子化やスポーツの多様化により日本では野球離れが進んでいる。野球界にとっては裾野の拡大に向けたまたとない好機になる。
 大会運営に目を転じれば、参加チームは前回より4増の20となり、野球不毛の地とされた欧州勢もチェコと英国が初勝利を挙げ、国際化が進んだ。トップ選手が続々と参加するようになり、観戦者や試合の視聴者数も順調に増えている。
 一方、組み合わせや会場、収益分配などが、主催する米大リーグ機構(MLB)寄りで不公平だとも指摘される。課題は課題として整理し、大会の存在価値を高めていく努力も欠かせない。

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