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2023.03.22 08:00

【マイナ普及策】節度を欠いていないか

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 一気に普及させた方が、行政サービスの効率化や利便性の向上といった効果が大きいことは理解できる。それでも普及に躍起になるあまり、教育の場まで利用しようとする姿勢には疑問を禁じ得ない。
 政府がマイナンバーカードに関する情報を学校現場で児童や生徒らに提供するよう、都道府県教育委員会に協力を求める文書を配布していたことが分かった。学校の政治利用と見られかねない手法は節度を欠いていないか。かえって政府への信頼を損なおう。
 デジタル庁と総務省は昨年7月、「普及促進に向けたお願い」とする文書を文科省に送付。マイナカードを「デジタル社会の基盤」とし、学校から児童や生徒、保護者への情報提供を要請した。これを受け、文科省は依頼内容を学校に周知するよう各教委に文書を出している。あまりに安易な対応というほかない。
 文科省は「強制力はない」とするが、果たしてどうか。現実的な教育行政の構図を踏まえれば、所管省庁からの要請は教委にとって一定の重さを伴う。教員と児童・生徒の関係ではなおさらだ。日ごろから指導を受ける教員からの情報提供を、批判的な視点も持ちながら客観的に、主体的に判断することは難しい。
 そもそも、社会保障や税などを利用範囲とするマイナカードと学校にどういう関係があるのか。戦後の学校教育システムでは、戦時の反省から政治的な中立性が前提となっている。文科省は政治利用と捉えられかねない行為に対して、極めて慎重に判断するべきだった。
 実際に懸念される事例も散見される。群馬県高崎市では昨年末、保護者宛てにカード申請を呼び掛ける文書を配布。岡山県備前市は2023年度、学校給食費などを無償とする条件として、世帯全員のマイナカード取得を設定する方針だ。「教育の平等性に反する」と批判の声が上がるのも当然だろう。
 これらの背景に、政府のなりふり構わぬ姿勢があるのは間違いあるまい。ことし2月に取得申請が人口の7割を超えたものの、3月末までに「ほぼ全国民に行き渡らせる」との目標にはほど遠い。その焦りがあるのは明らかだ。
 政府は24年秋に、健康保険証を廃止して「マイナ保険証」へ統一する関連法改正案を国会に提出。さらに地方交付税や、デジタル田園都市国家構想交付金の配分にマイナカードの普及状況が反映され、自治体からは「脅迫」「兵糧攻め」との悲鳴も聞こえてくる。
 だが、マイナ保険証に関する世論調査では、84%の人が政府の説明が「不十分」と答えている。力任せの普及策に走り、丁寧さを欠いているのではないか。
 河野太郎デジタル相は以前、普及事業のマイナポイントについて「邪道」と指摘していた。そうであるなら本道の普及策に立ち返るべきだ。利便性はもちろん、セキュリティーやプライバシー保護など不安を払拭する丁寧な説明が求められる。

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