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2023.03.03 08:00

【五輪談合で起訴】ずさん運営のつけは重い

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 円滑な大会運営を心がけるのは当然だが、チェック機能を失っていては運営の責任を放棄したと受け止められても仕方ない。甘い体質のつけは納税者に向かう。大規模大会の在り方を検証し、教訓を生かすことが求められる。
 東京五輪・パラリンピックの大会運営事業を巡る談合事件で、東京地検特捜部は独禁法違反(不当な取引制限)の罪で広告最大手の電通グループ、広告2位の博報堂など6社と、大会組織委員会大会運営局の元次長や電通の元幹部ら7人を在宅を含め起訴した。談合規模は約437億円となる。
 スポンサー選定を巡り組織委元理事や企業トップら15人が起訴された汚職事件と合わせ、計22人の刑事責任が追及される。五輪が舞台の捜査は終結する見通しで、商慣習や組織体制がもたらした負の側面の解明は司法の場に移る。
 巨額の公費が投じられたスポーツの祭典の汚点だ。大会に関わった人々を落胆させ、開催国としての評価も失墜させる。また立件に伴う入札参加停止措置で、今後の大規模イベントの運営に支障がでる可能性がある。多方面にわたる責任の大きさを重く受け止めなければならない。
 起訴状によると、2018年2~7月ごろ、入札が実施されたテスト大会の計画立案業務、随意契約となった本大会などの運営業務で受注企業を決めたとしている。
 浮かび上がるのは組織委内の電通依存の姿勢だ。大会を混乱なく開催することを優先することで、運営に対して組織委が厳格に関与する意識が弱まったように思える。
 国際オリンピック委員会(IOC)側がテスト大会の運営に不安を抱えていたことを背景に、スポーツビジネスに強い電通の存在感が強まっていったようだ。大会経費の手数料削減を迫られた電通は、各競技の運営を実績ある企業に割り振ることで効率化し、経費を浮かせる案を提示したとされる。
 テスト大会の計画立案業務は競争入札で実施することになったものの、割り振りの大枠は実質的に維持された。競争入札は金額ベースで3割ほどにとどまるという。入札が形骸化していたことになる。
 また、企業を割り振ることが法令順守の立場から検討されていないようだ。中止を働きかける機会があったものの新たな動きにはつながっていない。実績のある企業に担当させたいという思いは、組織統治を弱体化させる結果となった。
 大会の開催経費は早い段階から問題視されていたが、談合によって高止まりした可能性がある。ノウハウの不足は運営をゆがめていく。公的事業であり、不正の要因を徹底的に分析して、主体的な関与の在り方を探っていくことが重要だ。
 組織委は解散したが、残務処理に当たる清算法人は解散時期を当面延期した。国や関係機関は責任を曖昧にしてはならない。透明性を高めなければ、今後の大会への賛同は得られなくなる。

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