2024年 04月20日(土)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知新聞PLUSの活用法

2023.03.01 08:00

【性犯罪規定改正】周知徹底し被害を防げ

SHARE

 性犯罪を巡り、法制審議会(法相の諮問機関)が刑法の処罰要件の改正要綱案を法相に答申した。政府は今国会に関連法案を提出する。
 改正案は、処罰対象となる行為の範囲を実質的に広げた点が特徴だ。被害者側の声に沿って現行法の不備をカバーした形になっており、望まない性行為の強要を防ぐ上で一歩前進したと言える。
 「魂の殺人」と言われるほど被害者を傷つける性犯罪だが、現在、強制性交罪などは「被害者の抵抗を著しく困難にする程の暴行・脅迫」が成立要件となっており、裁判でも被害者の抵抗の程度が焦点になる。
 しかし、暴行や脅迫がなくとも、「恐怖で声が出なかった」「体が動かなかった」といった被害例は少なくない。現行の処罰規定は実態に合っていないとの批判があり、近年、性犯罪事件の無罪判決が相次いだことからも見直しを求める声が強まっていた。
 改正案では、被害者を「同意しない意思の形成や表明を困難にさせた状態」での性行為を処罰対象とし、それに至らせる要因として、従来の「暴行・脅迫」のほか、「アルコール・薬物の摂取」「上司・部下などの経済・社会的関係」など8項目を例示した。これにより、これまで顕在化しなかった性被害が掘り起こされる可能性がある。
 ただ、「同意しない意思の形成や表明が困難」との基準は、なお曖昧さが残り、8項目の中には「その他これに類する場合」ともある。性行為は、違法性が明らかな窃盗行為や殺人行為などと異なる。それだけに犯罪の基準が不透明なら国民は戸惑う。明確化に向けた継続的な取り組みが欠かせない。
 法制審議会は当初、処罰対象となる性行為について、被害者を「拒絶困難な状態にさせた場合」としていたが、改めた。
 「拒絶困難」は被害者に立証義務が課される。これに対して「同意しない意思」が明文化されれば、裁判では加害者側に同意の有無を問うことになり、犯罪として認められやすくなる。この点は評価できよう。
 不同意の性交を広く処罰対象にする案は「内心によるところが大きく、罪の規定が不明確になり、冤罪(えんざい)を生む可能性がある」として見送られた。
 一方、他国には自発的な性行為でなければ犯罪とみなす規定もあり、被害者団体からは、そのような規制の導入を求める声も上がる。性被害の減少へ実効性をあげる観点で、議論を深めてもらいたい。
 改正案ではほかに、性交同意年齢を13歳から16歳に引き上げることや、性被害は申告しづらいとして公訴時効を延長すること、社会問題化している盗撮を処罰する罪の新設なども盛り込まれた。
 重要なのは、これらの改正を通じて、同意のない性行為は許されないとの認識を広く浸透させ、性被害、性犯罪を未然に防いでいくことだ。国会審議などでしっかりと周知、啓発していく必要がある。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月