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2023.02.07 08:00

【同性婚差別発言】疑念増す政権の人権意識

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 岸田文雄首相の側近から飛び出した同性婚差別発言には、あきれるほかない。政権は人権問題に後ろ向きだとの疑念も増す。首相が訴え続けている「多様性が尊重される社会」を、もはや額面通りに受け止めることはできなくなった。
 首相秘書官の荒井勝喜氏が、性的少数者や同性婚を巡り「隣に住んでいたら嫌だ。見るのも嫌だ」などと発言。同性婚の導入で「社会のありようが変わってしまう。国を捨てる人、この国にいたくないと言って反対する人は結構いる」とも述べた。
 発言の適否は論をまたない。閣僚更迭で後手を繰り返した首相でも、「言語道断」と解任を即断してしまうような内容だ。荒井氏は後で「差別意識はなかった」などと釈明したが、信じられるはずがあるまい。
 基本的人権は普遍的な価値であり、その中でも性的少数者の権利保障は、いま最も人権意識を試されるテーマの一つであるはずだ。
 同性婚を法制化する国が増える世界の潮流から日本は遅れてはいる。ただ、同性カップルを婚姻相当と見なす「パートナーシップ制度」を導入する自治体は増加。同性婚を認めない現行の法規定を「違憲」「違憲状態」とした判決も続いている。
 司法が法的措置の議論を求め、各種世論調査も容認派が多数となっている。社会的な理解が深まる中で、ここまで露骨に否定する官邸中枢の存在に衝撃を禁じ得ない。
 さらに、より深刻だと言えるのは、これが個人の考えにとどまらない恐れがあることだ。
 荒井氏は、8人いる秘書官のうち広報を担当し、官邸の情報発信役を務めていた。その荒井氏が「(同性婚に)秘書官室は全員反対」と述べた。後に否定したが、冗談で言ったとは思えない。官邸の消極的なスタンスがうかがえないか。
 今回の発言に対し、首相や政権幹部は「内閣の考えにそぐわない」と強調する。しかし、性的少数者を「生産性がない」と評した杉田水脈(みお)衆院議員を総務政務官に起用し、人権感覚を疑われたことがある。
 そもそも、荒井氏の発言は、岸田首相の国会答弁を記者団に補足説明する中で出たものだ。
 首相は、同性婚の導入に対し「家族観や価値観、社会が変わってしまう」「極めて慎重に検討する課題だ」との見解を示した。当事者に寄り添っているとは言えない。荒井氏の発言を強く否定する首相だが、自らの答弁とは矛盾しないのか。
 人権を巡っては、2021年の東京五輪・パラリンピック前、女性蔑視発言や女性の容姿を侮辱する事案などが続き、国際的に厳しい目線にさらされた。荒井氏のような考え方の人材が要職にいたことで、日本の姿勢がさらに問われるのは必至だろう。5月の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)を「開く資格がない」との厳しい声も出る。
 岸田首相が、本当に「多様性尊重の社会」を目指すのであれば、相応の行動で示すべきだ。でなければ口先だけの政権になる。

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