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2023.02.06 08:00

【基礎的財政収支】黒字化への道筋を明確に

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 財政への信認が低下すると、悪影響は国民生活や企業活動に及ぶ恐れがある。楽観的な見通しを排除して健全化へ向けた取り組みを進めることが欠かせない。
 財政の健全性の度合いを示す国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)について、内閣府が示した中長期試算は、2025年度の収支は1兆5千億円の赤字になる見通しを示した。赤字幅は前回昨年7月の試算の3倍に拡大した。
 防衛費の増加や防災対策の追加歳出などが影響した。歳出のうち社会保障や公共事業など政策に必要なお金を、国債の発行に頼らずに税収などの基本的な収入で賄えない状況が続く。それでも26年度の黒字達成は変わらないとしている。
 ただし、高い経済成長を実現すると仮定しての見通しだ。前提とした国内総生産(GDP)成長率は名目で3%程度、実質で2%程度とした。だが、この20年で名目で3%を超えたのは1回にとどまる。そもそも現実的ではないとの見方があり、さらに現状は世界経済の後退が懸念される。思惑通りに進むとは限らず、下振れする可能性がある。
 高成長が達成できず、経済の実力が現状のままで推移すると仮定した場合は、25年度の赤字は5兆1千億円に膨らむとした。黒字化はさらに先になる。そうならないように取り組まなければならないが、高成長に期待するだけでは財政を一段と悪化させる恐れがあることを強く認識する必要がある。
 政府は黒字化の達成時期は20年度を目指すとしてきながら25年度へ先送りしている。政策効果で成長率が高まることを期待しても、実現できていないことを真剣に受け止めなければ繰り返されかねない。
 黒字化には歳出の動向も影響する。試算は、新型コロナウイルスや物価高に対応する対策がなくなることで歳出は減少すると見込む。企業の脱炭素を促す予算は、企業に課金する制度の新設をにらみ試算から除いた。改善へ有利な前提となる。
 一方、予算倍増が打ち出された子ども・子育て政策は、財源をどう手当てするのかが定まらない。重要な施策との向き合い方がはっきりしないまま試算の見栄えが良くなっても説得力には乏しい。
 市場は財政と金融政策に厳しい目を向ける。英国では前政権が打ち出した大型減税が財政悪化の懸念を招き、国債の金利が急騰した。信頼がゆらぐと大きな混乱を招くことになる。同時に、成長を押し下げない経済対策などが求められる。
 岸田文雄首相は「財政の持続可能性への信認が失われることがないよう、経済再生と財政健全化の両立に努める」と述べている。それは当然で、具体的な対応が大切になる。
 国の長期債務残高は1千兆円を超えた。赤字国債を発行して大型の補正予算を組むようでは収支は悪化し、黒字化はさらに遠のく。政策経費の見直しや歳入確保策が欠かせない。規模ありきの予算では信頼は高まらない。

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