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2023.02.02 08:00

【スポーツと暴力】理不尽な指導は許されぬ

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 スポーツの指導を巡って、暴力などを容認する風潮が根強く残っていることを如実に物語っていよう。理不尽な指導を撲滅するまでの道のりはまだまだ遠い。
 日本スポーツ協会が暴力やパワーハラスメント問題で設置した窓口への相談件数が2022年度、過去最多の300件を超える見通しだ。指導者による直接的な暴力は減る一方、暴言やパワハラの割合が増加。証拠が残りにくいよう陰湿化する傾向がみられるという。
 協会によると、相談件数は新型コロナウイルスの影響で、スポーツ界の人的な交流が停滞した20、21年度を除いて年々、増加している。かつて最多だった殴る、蹴るといった暴力は全体の14%(昨年末現在)で、14年度の31%から大幅に減った。
 だが、指導現場が改善しているとは言いがたい。
 「言葉の暴力」である暴言が全体の34%(14年度は20%)、無視や差別、罰走などのパワハラが29%(同20%)に増え、合計で6割を上回った。暴力は許されないとの認識が指導者のほか、子どもや保護者に広がる中、より被害を訴えづらい形になってきたとみられる。
 看過できないのは、被害者の4割が小学生、中高生が1割ずつを占める状況だ。多感な時期に暴言やパワハラなどの理不尽な指導を受けてしまうと、その競技を続けられなくなったり、心身に傷を負って引きずったりしかねない。子どもの才能や未来が摘み取られる指導は、決して容認できない。
 日本のスポーツ界にはかつて、実績を上げるためには指導者の暴力などを必要悪とする雰囲気があった。特に子どもは理論で諭すより、手っ取り早く怖がらせた方が思い通りにしやすいとの指摘もある。スポーツの指導には本来、高度なノウハウが求められるがゆえに、かえって安易な方法に走ってしまうのか。
 だが、そうした指導が数々の悲劇を招いてきたことを忘れてはなるまい。学校での部活で、指導者に心身を追い詰められた生徒が自殺する例が後を絶たない。10年前には柔道女子日本代表がそろって暴力指導を訴えた。子どもからトップ選手まで、被害の恐れと無縁でいられなかった状況を表していよう。
 その反省から13年、日本体協や日本オリンピック委員会(JOC)など5団体が「暴力行為根絶宣言」を採択。暴力は「人間の尊厳を否定し、スポーツそのものの存立を否定する恥ずべき行為」であると確認した。
 その理念に対して現状はまだ変化の途上なのだろう。繰り返し、原点を確認する必要がある。指導者の努力はもちろん、子どもやその保護者も理不尽な指導は許されないとの認識を共有し、問題の芽を早期に摘み取ることが重要になってくる。
 公立中学校の休日の部活動は23年度から、段階的に民間団体などに委ねる「地域移行」が始まる。さまざまな課題も浮かび上がるだろうが、暴力根絶への好機としたい。

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