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2023.01.31 08:47

仕事を頑張る優しい妹だった...京アニ放火事件の遺族、高知市で被害者支援訴え

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渡辺美希子さんが携わった作品のイラストが並べられた会場で、「今でも苦しんでいる人がたくさんいる」と話す母の達子さん(右)と兄の勇さん(県警本部=森本敦士撮影)

渡辺美希子さんが携わった作品のイラストが並べられた会場で、「今でも苦しんでいる人がたくさんいる」と話す母の達子さん(右)と兄の勇さん(県警本部=森本敦士撮影)

 36人の命が奪われた2019年の京都アニメーション放火殺人事件で犠牲になった渡辺美希子さん=当時(35)=の母、達子さん(72)と兄、勇さん(44)=いずれも滋賀県在住=が30日、高知市の県警本部で「想いと願い」と題して講演した。2人は被害者支援の重要性を訴えるとともに、「悲惨な事件が起こらない世の中になってほしい」と語った。

 美希子さんは「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」で美術監督を務めるなど京アニの中核スタッフとして活躍。この日、会場には美希子さんが携わった作品のイラストが並べられた。

 「子どもが自分より先に亡くなるのはものすごくしんどかった」。講演ではまず、達子さんが当時を振り返った。事件後すぐに京アニ本社に駆け付けた達子さん。DNAの鑑定結果が出たのは約1週間後で、勇さんら家族4人で遺体と対面した。勇さんは「むごい」とだけ漏らしたという。

 達子さんは今も月1回、滋賀県警の被害者支援制度でカウンセリングを受けている。「子どもを亡くした家族はみんなしんどいとも言わず耐えている。カウンセリングはありがたい」と精神的なケアの必要性を述べた。

 「仕事を頑張って、優しい妹だった」。勇さんも美希子さんへの思いを語った。勇さんもアニメが好きで、一緒にテレビを見たり、漫画を交換したりしていた。「僕が好きじゃなかったら妹も興味を持たなかったんじゃないか。(事件に巻き込まれたのは)僕のせいじゃないか」と考えたこともあったという。

 事件当時、勇さんの妻は妊娠中で、おなかにいた息子は美希子さんの誕生日に生まれた。えとも一緒だった。勇さんは「僕にできることもあるというメッセージだ」と感じたといい、達子さんとともに講演活動を始め、各地で再発防止を訴えている。

 「(犯人の)孤立や孤独が、今回の事件と100%結び付いているかは分からない。でも、大切に思っている人がいる状態なら踏みとどまれることがたくさんあると思う」と勇さん。「人への配慮や心遣いが広がる社会になってほしい。それが悲惨な事件や戦争が起こらない世の中につながる」と語った。

 講演は県警が主催。警察官や弁護士、こうち被害者支援センターの職員ら約100人が参加した。(村上和陽)

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