2023.01.27 08:00
【1票格差「合憲」】地方の声が届く仕組みを
判決は、合憲かどうかの目安とされてきた「2倍の格差」に固執しなかった。国会が、人口比を反映しやすい議席配分方法「アダムズ方式」を導入するなど、安定的に格差が是正される仕組みを設けたことを評価した。
1票の格差問題は、全国一斉提訴が始まった09年選挙から、選挙のたびに司法判断を受け国会が是正する繰り返しだった。何度も是正を求められるのは政治の取り組みが不十分だったからであり、その構図に一区切りが付いた形になった。節目の判決だと言えるだろう。
最高裁は過去、格差が2倍超だった09年、12年、14年の衆院選を「違憲状態」とし、1・98倍だった17年選挙は合憲とした。2倍超に拡大した21年選挙の評価が訴訟の焦点であり、高裁判決では「合憲」9件、「違憲状態」7件と二分していた。
国会は16年、アダムズ方式の導入と、国勢調査ごとに格差を2倍未満に見直す仕組みを決定。昨年11月には、新制度に基づき、議席を「10増10減」する改正公選法が成立している。判決はこの流れを踏まえ、21年の2倍超の格差も「是正が予定されている」などとし、合憲とした。
最大2倍の格差を認めたようにも受け取れる判決には批判もあるが、継続的に是正されることを前提にしており、政治側に課された責務はこれまで以上に重い。1票の格差問題は言うまでもなく、投票価値の平等を追求することが基本だ。新制度の着実な運用が求められる。国会は、合憲判決に緩んではいけない。
ただ、人口が減少している地方にとって、アダムズ方式が厳しいものになるのは事実だ。
次の「10増10減」では、増えるのは都市部の1都4県で、減るのはすべて地方だ。地方から都市部への人口流入は続いており、40年には首都圏4都県の議席が衆院定数の29%を占めるとの試算もある。
参院も1票の格差問題から、本県など4県は16年から合区選挙区になっており、これからの合区の増加が取りざたされている。国政に地方の声を届けることは難しくなる一方で、懸念が強まっている。
最高裁は今回の判決でも「投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する絶対の基準ではない」との見解を示した。衆参の役割分担論も含め、人口の基準のみにとらわれない新しい制度が必要ではないか。
地方の議員が減る危機感から、昨年の「10増10減」の決定時には、定数や区割りの在り方を抜本的に検討するとの付帯決議が採択された。
参院合区の導入時も、公選法の付則に「抜本見直しで結論を得る」と明記されたが、守られないでいる。付帯決議や付則をなおざりにすることは許されない。速やかな検討の場の設置と精力的な議論を求める。