2024年 04月20日(土)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知新聞PLUSの活用法

2023.01.04 08:00

【年初に 経済】賃上げで好循環なるか

SHARE

 先行きに不透明感が漂うこの1年は、日本経済が難しいかじ取りを求められることは間違いあるまい。世界的なインフレの波は日本にも及び、昨年はあらゆる商品、サービスの値上げラッシュに見舞われた。今年も、長期化するロシアのウクライナ侵攻など多くの不安定要素を引きずったままだ。
 激動する世界情勢をにらみつつ、足元の物価高騰を乗り切る必要がある。持続的な成長へのきっかけをつかめるか、さらなる停滞を余儀なくされるのか。賃上げを実現できるか否かで日本経済の将来像は大きく変わってこよう。
 昨年は、世界の動きに翻弄(ほんろう)されたといってよい。新型コロナウイルス禍からの経済活動再開に伴って、国際的に資源価格が上昇。昨年2月には突如、資源国のロシアが穀倉地帯のウクライナに侵攻し、その流れに拍車を掛けた。
 さらに、記録的な円安が重なる。米欧の中央銀行がインフレ抑制に向け、大幅利上げに踏み切った。一方の日銀は超低金利政策を堅持したため、日米の金利差が拡大。記録的な円安ドル高は輸入物価の上昇を招き、家計や企業を圧迫した。
 消費者物価指数は昨年11月に前年同月比で3・7%上昇と、実に40年ぶりの伸び率に達した。安倍政権から続く大規模金融緩和の限界が露呈したというほかない。
 日銀が年末に長期金利を事実上、引き上げたことで円安は一服したものの、物価高は容易に収まりそうにない。11月の企業物価指数は9・3%上昇と高止まりしている。企業がコスト上昇分を製品価格に転嫁する動きは当面続くとみられる。
 だが、家計収入は物価高に追いつかず、実質賃金は下がり続けている。生活防衛の動きが強まれば、景気の減速が現実味を帯びる。賃上げの実現で消費マインドを維持し好循環につなげられるかどうか。日本経済の岐路と言えよう。
 海外経済の先行きも見通せない。米欧では金融引き締めで景気減速の懸念が強まっており、国内輸出企業の業績に影響を及ぼす恐れも指摘される。ウクライナ侵攻がいつ収束に向かうかも大きな焦点だ。戦争が長引くほど資源や食料の供給不安が世界経済にくすぶり続ける。
 国内外に不安定要素が多い中、岸田政権の経済政策は少なくとも、中長期的な国民の期待を失いつつあるのではないか。
 岸田文雄首相が掲げた「新しい資本主義」は実行段階に移るにつれ、「成長と分配の好循環」を促す姿勢が後退した印象が拭えない。「令和版所得倍増計画」が投資を促進する「資産所得倍増プラン」へと規模感を縮小するなど、抜本的な構造改革には力強さを欠く。
 財政規律の緩みも看過できない。政府の借金である国債の半分を日銀が保有する状態にもかかわらず、政府の財政運営は国債発行に依存し、歳出は膨張を続ける。金融引き締めの傾向が強まれば、将来の財政運営の大きな制約となりかねない。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月