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2023.01.01 08:00

【年初に 展望】平和の在り方考える年に

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 2023年が明けた。
 幸多い一年を願い、決意を新たにする一日になる。ただ、多くの人が時代の岐路に対する不安も抱いたままの年明けなのではないか。
 昨年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻は国際社会に大きな衝撃を与えた。プーチン・ロシア大統領の目算は外れたとされ、戦闘は長期化。和平の兆しは見えず、市民の犠牲は増え続けている。
 世界は20世紀の2度にわたる大戦の惨禍を経て、戦争の違法化が進んだはずだった。
 ところが、「プーチンの戦争」は国際法の発展を無視する。核兵器使用をちらつかせた国際社会へのどう喝。民間人虐殺。生命と生活を支えるインフラ施設への攻撃。人々は時計の針を戻したかのような戦争の非人道性を目の当たりにしている。
 昨夏の本紙で東京大専任講師の小泉悠さんは「この戦争は古典的な大戦争が21世紀でも排除できないと証明した」と指摘した。だが、こうも続けている。「だからこそ外交は重要だし、戦争を違法とする国際法の維持も繰り返し確認すべきだ」
 既に世界は二極化し、第2の冷戦期に入ったという見方がある。
 むろん、ロシア軍の蛮行を見るにつれ、中国やインドも距離を測るなど国際情勢は単純ではない。とはいえ、米欧や日本などの民主主義国家と専制主義国家の対立、分断が加速したかに映るのも事実だ。
 激動の中、岸田文雄首相は過去の教訓からこれまで政府が堅持してきた方針を次々に転換している。
 昨年末の安全保障関連3文書の改定では反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有や防衛費の大幅増などを正式方針とした。第2次世界大戦の惨禍を経て戦争を放棄し、「専守防衛」を国是としてきた戦後日本のありようを覆しかねない内容になる。
 関連予算を含む防衛費は2027年度に国内総生産(GDP)比2%とすると記載した。これも1976年の三木武夫内閣以来、財政圧迫や軍事大国化の懸念に配慮して一定の目安となってきた「1%」の理念を捨て去ることを意味する。
 防衛分野に限らない。原発政策でも東京電力福島第1原発事故の教訓の下、依存度の低減を掲げてきた歴代政権の政策から、「原発の最大限活用」にかじを切った。
 問題は30%台の支持率でしかない政権が、こうした歴史的転換を国会や選挙で十分に説明せず、国民的な議論や合意を欠いたままで拙速に決めていくことだろう。 
 昨年は、国際情勢や政治が生活に直結することを改めて実感した人も多いのではないか。ウクライナ情勢も影を落として小麦など輸入原材料や資源の価格が上昇。円安も重なり国民は物価高騰にあえぐ。この状況で岸田政権が打ち出した防衛増税もこのままいけば、なお生活にしわ寄せが及ぶことになろう。
 転換に対する熟議を求めるべき一年になる。平和の在り方、民意を置き去りにしない政治の在り方をわが事として考える年にしたい。

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