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2022.12.22 08:45

高知県奈半利町、今も事件の影 ふるさと納税復帰後も低調 町民断罪「家族ビジネス」

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返礼品を箱に詰める水産物加工業者。「昨日の注文は2件。これからに期待したい」と前を向く(奈半利町甲)

返礼品を箱に詰める水産物加工業者。「昨日の注文は2件。これからに期待したい」と前を向く(奈半利町甲)

 県内汚職では過去最高の贈収賄額となった安芸郡奈半利町のふるさと納税汚職事件。人口3千人の小さな町で「エース職員」と評された柏木雄太被告(44)に21日、懲役4年6月の実刑判決が下った。町はこの10月からふるさと納税制度に復帰したものの、今も事件が暗い影を落としている。

 2015年度からの5年間だけで114億円という全国屈指の寄付額を集めた同町。事件への注目度は高く、21日の高知地裁ではマスコミや捜査関係者ら137人が35枚の一般傍聴券を求めて列を作った。

 「犯行の首謀者として最も重い責任を負うべき立場だ」

 1時間近くに及んだ判決言い渡し。薄い灰色の上着に黒のジャージー姿の柏木被告は、逮捕から2年9カ月間の勾留生活に疲れたように見えた。裁判長が量刑理由を読み上げた際には硬い表情で前方をじっと見つめた。

 一連の公判を傍聴してきた同町の男性(73)は、柏木被告の父=収賄罪で公判中に病死=が30年ほど前に事業に失敗し、一家が余裕のない生活を送っていたことを述懐。返礼品事業に関わった柏木被告の叔父から両親と同被告に対し、賄賂を含め約2億6千万円が渡っていたことに、「法外な金が柏木家に流れていた。雄太は両親にいい思いをさせたかったのかもしれないが、制度をファミリービジネス化させたことは許されない」と断罪した。

 柏木被告と交流のあった町内の男性(71)も傍聴席で判決に耳を傾けた。「今も町民の話題は事件のことばかり。しっかり反省して真っすぐ生きてほしい」と求めた。一方で、「ふるさと納税はチェックが緩い制度。第2、第3の奈半利事件が起きないか心配だ」と懸念を示した。

 ◇ 

 町は返礼品基準違反で制度から2年間除外され、10月1日に復帰したばかり。町によると、寄付金は12月18日までに計145件253万円の寄付にとどまる。

 事件前はドレッシングなどを返礼品で出していた男性(51)は「事件のからくりを後で知って驚いた。しっかり罪を償ってほしい」。引き続き食品を返礼品に出している女性店主(78)は「生産者が潤い、町民が恩恵を受けるというプラスの面もあったが、不正は許されない。法令を守り、奈半利ファンが増えるようフェアな取り組みを」と話した。

 町内の喫茶店。判決を取り上げたテレビのワイドショーを見ていた女性(89)は「全国に恥をさらしてしまい情けない限り。知名度が上がったと発想を変えて、良いことで全国に知られるような取り組みをしてほしい」と注文を付けた。

 町が15~19年度に集めた114億円のうち101億円が返礼品の調達に使われた。全国9位の39億円を集めた17年度は99%が調達費や送料、仲介料などに使われ、町の事業費に回せたのは数千万円。裁判長は判決理由で、柏木被告が返礼品取引を通じて叔父の精肉店に法外な利潤を得させ、その相当部分を賄賂として還流させたと指摘した。

 町内の商店主(68)は柏木被告の量刑について「軽すぎる。ルール無視のやりたい放題で、どれだけ町の信用を落としたか。(検察は)控訴すべきだ」と憤慨。受託収賄について無罪になった森岡克博被告(48)についても「息子が関わった返礼品の梱包(こんぽう)作業代は、時給にしたら何千円にもなる。そんなばかな話はない。これが(有罪と)認められないとは信じられない」と強調した。

 竹﨑和伸町長は「両被告の量刑については司法の厳正な判断であり、コメントする立場にない。事件で各方面に多大なご迷惑をかけた。全職員が事件の教訓を胸に刻み、町政への信頼回復に全力で取り組む」と神妙な面持ちで話した。(安岡仁司、植村慎一郎)

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