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2022.12.10 08:00

【電力カルテル】自由化の趣旨ゆがめる

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 電力大手4社が、話し合いにより電気料金を不当に高止まりさせていた疑いが浮上した。事実なら、電力小売り自由化の趣旨をないがしろにする行為だ。顧客への背信でもある。責任が厳しく問われる。
 電力販売でカルテルを結んだとして、公正取引委員会は独禁法違反で中部電力、中国電力、九州電力に計1千億円余りの課徴金を命じる処分を通知した。課徴金減免制度に基づき処分対象になっていないが、関西電力も加わっていたとされる。
 4社は2018年秋ごろから、事業者向けの電力販売で、互いに他社の区域での営業を控え、顧客獲得を制限していた疑いがあるという。
 電力自由化は、新規事業者に市場を開放して健全、公正な競争環境をつくり、料金を含めた各社の経営努力を促して、顧客の満足度を高める狙いで導入された。それが成長戦略にもつながっていくとされた。
 その市場のルールをゆがめた。電力大手は公共的な使命があり、地域経済のリーダー役も務めるような事業体だけに、悪質さが余計に際立つ。課徴金の規模は過去最高となった。消費者の信頼も損ねた。自覚を欠いた代償を重く受け止めなければなるまい。
 カルテルに至るまでの経緯からは、業界、とりわけ関電の身勝手さが浮かび上がる。
 自由化を受けて、新規参入の「新電力」とのシェア争いが激化した関電は、従来の「縄張り」を超えた安売り合戦をいったん展開した。しかし、燃料費高騰などで安売りが難しくなり方針を転換。各社と話し合い、消耗戦を避けていたようだ。
 そこからは、地域独占販売が長く続いたことで生まれた大手のおごりや、旧態依然とした横並び体質のようなものが透けて見える。
 カルテルで中心的な役割を果たしながら、自主的に違反申告をして課徴金を免れた関電に対して、他の電力大手の不満が伝えられる。関電は説明責任を果たすとともに、独自に責任の取り方を検討するべきではないか。
 今回の疑惑の枠外ではあるが、四国電力も大手の1社だ。経営体質や社風の面で、他の大手と共通する課題があるようなら、他山の石としてもらいたい。
 電力市場は現在、燃料高による調達難などで新電力の撤退が続き、体力のある大手の存在感が増している。値上げに苦しむ消費者は、料金を抑える大手の経営努力に頼らざるを得ない状況も生じている。
 しかし今回のカルテル疑惑で、業界の経営姿勢に疑問の目が持たれてしまったのではないか。業績が急速に悪化する業界にあって、大手5社が来春の電気代の大幅値上げを申請している。受け入れられないとする消費者も出てこよう。
 電力各社は、真摯(しんし)に経営努力に取り組み、それをしっかりと説明していくほかあるまい。同時に政府は、硬直化する電力市場で健全な競争が行われるよう、対策を講じていく必要性もあろう。

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