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2022.12.03 08:00

【W杯予選突破】「新しい景色」を見たい

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 格上相手に臆せず挑み、少ないチャンスを生かして結果を手にした。世界が最も熱狂するスポーツ大会での「ジャパン」の躍進に、希望や刺激をもらった人も多いことだろう。
 サッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会で、日本代表が決勝トーナメント進出を決めた。
 森保一監督率いる日本は、ともに優勝候補の一角である欧州の強豪、ドイツとスペインと同じ予選リーグに入り、戦前は厳しい下馬評が大勢を占めていた。しかし、初戦のドイツに勝利。次のコスタリカ戦は苦杯をなめたものの、3戦目のスペイン戦を制し、16強入りした。
 日本は、過去最高成績を上回る8強以上を目標に掲げ、それを「新しい景色」と呼ぶ。その景色をまだのぞけたわけではない。ただ、大舞台で2度見せた「ジャイアントキリング」(番狂わせ)は間違いなく日本サッカーを新たなステージに引き上げた。達成した森保ジャパンにまずは敬意を表したい。
 それにしても、応援する側も試されるような日本の戦いぶりだ。ドイツ戦、スペイン戦はともに守勢一辺倒の前半から一転、後半に躍動した。強豪国に勝つ一方、評価の低かったコスタリカに敗れる振れ幅の大きさにも一喜一憂させられた。
 それら戦術や技術面での評価はさまざまあり、結果論の部分もあるのだろうが、一つ確実に言えるのは、勝因を監督の手腕抜きでは語れないということだ。
 選手を信じる姿勢、裏方も含めた総力戦とする考え方など森保監督の言動は一貫しており、何があっても動じる様子を見せない。
 世界的にサッカー代表に対するメディアや世論の目線は厳しく、日本でも今回、結果次第で評価が一変する「手のひら返し」が繰り返されている。それでぶれるようならチームは浮足立ち、指導者としては務まらないということだろう。
 日本のW杯出場は7回連続。初出場から四半世紀たつ。1993年のJリーグ開幕、森保監督も味わった同年の「ドーハの悲劇」を含め、歴史の重みも忘れることはできまい。
 この間、日本サッカーは挫折と成長を繰り返しながら、在るべき姿を模索してきた。14年W杯ブラジル大会では、力を過信して惨敗した。そして18年ロシア大会は8強目前で惜敗。「あと一歩足りなかった何か」(当時の西野朗監督)を埋めようと4年半を過ごしてきた。
 それらの積み重ねがサッカーへの考え方を成熟させ、引き出しを増やした。今大会、勝負どころで負けていないのは経験が糧になっているからにほかなるまい。
 次戦は8強を懸けてクロアチアと戦う。前回準優勝の欧州の強豪だが、「新しい景色」を日本のファンと共有してもらいたいものだ。
 とはいえ、勝負事である。日本にだけ都合よく進むとは限らない。結果が出なかった代表チームへの叱咤(しった)は世界共通だとしても、行きすぎた誹謗(ひぼう)中傷が問題視されている。節度もまた問われよう。

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