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2022.12.02 08:00

【救済新法案】議論重ねて実効性高めよ

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 家族の困窮や人権侵害も指摘され、救済と被害の未然防止が求められている。国会での法案審議を通してその質を高めていきたい。
 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題を巡り、政府は被害者救済新法の法案を衆院に提出した。今国会での成立を目指す。
 法案は、「霊感」で不安をあおる寄付の勧誘行為のほか、借金、生活に不可欠な事業用資産の処分による資金調達の要求を禁じる。国は違反行為があると勧告し、命令に違反したときの罰則規定も設けた。
 寄付を取り戻す仕組みも盛り込んだ。寄付の取り消し権を行使できる期間は寄付の申し込み、意思表示から最長で10年とする。寄付した人が扶養する子や配偶者による寄付の取り消し権行使も記した。
 焦点の一つだったマインドコントロール(洗脳)下の寄付取り消しは、法案への明記を見送っている。野党は救済対象とするべきだと主張したが、与党は洗脳の定義が難しいとの慎重な立場を崩さなかった。
 一方で罰則の対象外の位置付けで、法人の配慮義務として「自由な意思を抑圧しない」との規定を盛った。ほかにも、個人や家庭生活の維持を困難にしないことや、勧誘する法人を明らかにし、使途を誤認させないことを明記した。
 だが、配慮義務にとどめたことに不十分との批判もある。適切な判断ができずに不安や困惑を感じないまま寄付すると、自由な意思の抑圧が認められないことが想定される。
 政府側は、信者が使命感や義務感から寄付した場合、救済は困難な事例があるとの認識を示す。悪質な勧誘と受け取っていなければ対処しにくい側面はあるだろう。それだけに被害は表面化が遅れかねない。
 こうした場合も救済の対象に含めるように求める意見が出ている。政府は個別の判断になるとの見方だが、救済の網の目が粗くならないように注意する必要がある。
 返還請求の規定も、家族の状況などで実効性への疑問が向けられる。どれほど救済につながるのか、論議を重ねる必要がある。
 岸田文雄首相は、これらの配慮義務に反する不当な寄付行為が行われた場合、民法上の不法行為の認定や損害賠償請求が容易になると述べている。条文の解釈の明文化を図り実効性ある制度にする考えを表明した。被害者救済につながる方策を手厚くすることは不可欠だ。
 世論調査では、洗脳された人の寄付取り消し規定が必要だとの判断は75%に上る。今国会での法成立を過半数が望み、一方でこだわる必要がないとの考えも4割弱ある。実効性を見定めたい思いがうかがえる。
 法成立を政権浮揚につなげたい思惑もあるだろうが、まずは十分に機能する内容とすることだ。法案化作業は各党の意見も参考にしながら進められたが、完全には一致していない。首相は、日本の法体系の中で対応できる限界を探る意思を示した。実効性のために法案の修正も排除しない柔軟な対応を求めたい。

高知のニュース 社説 高知と旧統一教会

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