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2022.11.30 05:00

【森友改ざん訴訟】真相を葬ってはならない

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 なぜ国有地の不可解な売買契約が結ばれ、財務省幹部の指示で文書改ざんまで行われたのか。なぜ担当者が自殺に追い込まれなければならなかったのか。真相をうやむやにしたり、葬ったりしてはならない。
 森友学園に関する財務省の決裁文書改ざんを苦に自殺した近畿財務局の元職員、赤木俊夫さんの妻が、改ざんを主導した佐川宣寿元国税庁長官に損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁は請求を棄却した。妻は控訴する意向を示している。
 財務省が組織的な改ざんをしたと認めたものの、賠償責任を負うのは国であって、佐川氏個人に法的責任はないと判断した。「公務員個人が職務で損害を加えた時は国が賠償責任を負う」とする国家賠償法の規定を根拠にした。
 過去の判例を踏まえても一定想定された判決ではある。ただ刑事事件としては関係者全員が不起訴となって捜査が終了している。遺族が「真実が知りたい」と民事訴訟にまで持ち込んだのに、司法の限界が随所に見られる裁判だった。
 妻が2020年3月に国と佐川氏を相手に提訴していた。国は昨年、赤木さんが改ざんの経緯を記録した「赤木ファイル」の存在を認めて開示。組織ぐるみの改ざんが改めて明らかになった。財務省の度重なる改ざん指示に赤木さんが強く反発していた記載もあった。
 開示を促したのは裁判所であり、その点は評価できる。ただ、改ざんの動機や焦点になっていた政権中枢との関係は判然とせず、裁判でさらなる解明が期待された。
 ところが国はその後、賠償請求を受け入れる「認諾」をし、突然、訴訟の幕引きを図った。裁判で深入りされるのを避けたのでは、と疑問の声が生じたのは当然である。
 佐川氏との訴訟はその後も続いたが、地裁は結局、佐川氏らの尋問を認めず結審していた。
 判決が財務省の組織的な改ざんを認めたとはいっても、それは財務省の調査報告書で既に明らかにされていたことである。判決には報告書の内容を超えるような事実認定はなく、事実認定は報告書をなぞったといえなくもない。
 改ざんと自殺の因果関係にも言及しなかった。これが2年8カ月に及んだ裁判の結果である。
 森友学園問題は、いまだ解消していない第2次安倍晋三政権時代の疑惑である。学園が小学校の建設予定地として国有地の購入契約を結んだ際、8億円の値引きや10年の分割払いなど特例ずくめだった。
 安倍氏の妻、昭恵氏が一時、小学校の名誉校長だったことから、安倍夫妻の意向や官僚の忖度(そんたく)があったのではないかと取り沙汰されてきた。決裁文書改ざんはその延長線上にあり、17年、国会で疑惑の追及が続く中で画策された。
 国や関係者は全容の解明に向け、引き続き真摯(しんし)な姿勢と説明責任が求められる。賠償金を払って終わりであるかのような対応は決して許されない。

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