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2022.11.25 08:00

【ウクライナ停電】インフラ破壊をやめよ

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 寒さの厳しい冬を暖房なしで過ごすことになりかねない。エネルギーインフラが破壊されると、ウクライナ市民の生活は極めて大きい影響を受ける。攻撃の即時停止が不可欠だ。被害の把握と復旧へ向けた取り組みの強化が求められる。
 ロシア軍は、ウクライナの首都キーウ(キエフ)を含む各地へミサイル攻撃を繰り返している。一部はエネルギー施設を標的とする。
 ウクライナの電力会社は、広い範囲で電力インフラが損傷したとして、全土で緊急停電を実施した。事故を防ぎ、復旧に必要な措置と説明する。各地で断水も起き、困難な生活を強いられている。
 冬には、地域によっては氷点下20度にまで冷え込むという。状況はさらに厳しくなることが危惧される。ゼレンスキー大統領は、電力インフラに対する攻撃を大量破壊兵器の使用に匹敵すると述べ、「人道に対する罪」だと非難している。
 世界保健機関(WHO)のまとめでは、医療関連施設への攻撃は700件を超える。エネルギー関連施設の被害で、病院などでの医療活動も制約を受けている。ロシア側は、軍事目的のインフラしか攻撃していないと言い張るが、避難所や商業施設への無差別攻撃もあり、死傷者が増え続けている。
 攻撃は原発事故の危険性も高めている。4原発で緊急保護システムが作動して外部電源と切断する事態が起きている。
 ロシア軍に占拠され9月に稼働を停止した南部のザポロジエ原発では、原子炉冷却に必要な外部からの電力供給がなくなり、非常用の発電機が作動した。攻撃で大事故につながる恐れがあるのはもちろん、外部電源の喪失が繰り返されることに危機感が強まる。
 ミサイル攻撃を巡っては、北大西洋条約機構(NATO)に加盟する隣国ポーランドに着弾する事案も発生した。ロシアのミサイルを迎撃するためウクライナ軍が発射したとの見方が有力のようだが、戦局拡大への緊張が一時高まった。重大な結果を招くことがないようにするには、やはり攻撃をやめることだ。
 ロシアのウクライナ侵攻から9カ月となった。短期決戦の思惑はウクライナ側の抵抗でかなわず、一方的に併合を宣言した地域の一部も奪還されている。ロシア経済は米欧などの制裁で停滞している。
 ロシアと関係の近い旧ソ連構成国の一部からは、軍事作戦の終結と停戦交渉の再開を求める意見が出るようになった。事態を動かすほどの圧力となるとは現状では考えにくいが、こうした見方が出てきたことは歓迎される。より大きなうねりとなることを期待したい。
 国際社会はロシアへの批判を強めてきたが、侵攻の長期化に伴い各国の向き合う姿勢には濃淡が見られる。食料やエネルギー問題は世界経済にも重くのしかかる。早期に停戦し、ロシア軍が撤収することが欠かせない。その実現へ向けた外交努力を続ける必要がある。

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