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2022.11.22 01:38

【閣僚相次ぐ辞任】後手続き政権不信増す

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 岸田文雄首相が、「政治とカネ」の問題で疑惑が相次いでいた寺田稔総務相を更迭した。これで岸田内閣の閣僚は、1カ月の間に3人が辞任した。異常事態と言える状況だ。
 一義的にはそれぞれの閣僚の問題だろう。だが、首相の任命責任は重い。辞任を巡るいずれの決断も後手に回り、状況を見極める感度や判断力の鈍さも露呈した。
 首相の求心力はさらに陰り、政策の推進力に支障も出よう。内外ともに重要課題が山積している。国民にこの政権に託してよいのかとの疑問が膨らんでもおかしくあるまい。
 寺田氏を巡っては、10月上旬から疑惑が次々と明らかになっていた。
 事務所費の支払いを通じて資金を家族に還流したり、関係する政治団体が故人を会計責任者としていたりしたほか、領収証を偽造した疑いが持たれ、政治資金報告書への記載漏れなどもあった。さらに、昨年の衆院選で運動員を買収した疑いも新たに浮上していた。
 寺田氏が「問題ない」との姿勢を貫く案件もあるが、一連の問題から政治資金の扱いがずさんだったのは明白だ。その多くで、疑惑を払拭するような説明もされてこなかった。
 総務省は政治資金規正法を所管する省庁だ。これだけ問題が浮上している以上、そのトップにふさわしくないのは明らかだろう。
 にもかかわらず弁明を続け、「地元では『説明に感心した』という声しか聞いていない」と、驚くような開き直りを見せる場面もあった。
 寺田氏は辞任理由に、自身の問題が国会審議に支障をもたらすことを挙げた。岸田首相も同様に、国会対策の観点を強調している。
 両者とも資金疑惑を直接的な理由にしておらず、納得はできない。これで幕引きではない。引き続き説明責任を果たしていく必要がある。
 岸田内閣の閣僚辞任は、山際大志郎前経済再生担当相、葉梨康弘前法相に続く。首相はその度に「任命責任は重く受け止める」と話すが、こう続くようだと、その言葉の軽さを感じざるを得ない。
 いずれの閣僚辞任も受け身の決断で、与党内からも「後手」批判を招き、結果的に傷口を広げた。一方で首相は、民意を丁寧に拾う必要があった国葬の実行や原発回帰方針などを唐突に決めてきた。「決断」のセンスに懐疑的にならざるを得ない。これでは信頼は得られない。
 国会は12月10日に会期末を迎える。補正予算案や旧統一教会問題を受けた救済新法、安全保障関連3文書の改定、新型コロナウイルス第8波への対応など課題は山積する。
 今回の辞任で、重要法案の審議日程は窮屈になった。総務省の所管する地方税財政やマイナンバーカード、NHKの業務改革の議論にも影響が生じる。責任は重い。
 今の政権の混乱ぶりは、岸田首相のみの問題だろうか。国政に関わる人材の質、組閣のシステムなども影響していよう。それは国民生活にも直結してくる。自民党は組織の在り方を見つめ直すべきだ。

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