2022.11.19 08:00
【日中首脳会談】対話から関係の再構築へ
岸田文雄首相と中国の習近平国家主席が会談した。日中首脳の対面会談は約3年ぶりになる。国交正常化50周年を迎え、冷え込んだ関係の改善へ前向きな取り組みが必要だ。
日本の安全保障環境は厳しさを増している。中国は覇権主義的な行動を取り、北朝鮮が進める核・ミサイル開発に警戒が怠れない。きのうは大陸間弾道ミサイル(ICBM)級の弾道ミサイルが日本の排他的経済水域(EEZ)内に着弾した。日本の自衛の在り方が議論され、首相は防衛力の抜本的強化と予算増額の決意を繰り返し表明している。
中国は海洋進出を強めている。沖縄県・尖閣諸島周辺で海警局船による領海侵犯を続け、東・南シナ海での力による一方的な現状変更を試みる。台湾情勢は米中間の緊張が高まる。8月にはペロシ米下院議長の台湾訪問に対抗し、中国は日本のEEZ内を含めた海域に弾道ミサイルを撃った。
首相は会談で、こうした動きに「深刻な懸念」を伝え、台湾海峡の平和と安定の重要性を訴えた。
これに対し習氏は、台湾や人権の問題を中国の内政と位置づけ、その立場を尊重するよう求めた。干渉は受け入れない姿勢を貫くのは、権力基盤を固めて長期政権をもくろむ習氏にとっては当然のことだろう。
一方で、閣僚級の対話の早期再開で合意したことは前進だ。防衛当局間での意思疎通の強化でも一致した。習氏は尖閣を巡る対立を念頭に、「食い違い」を適切にコントロールする必要性に言及している。不測の事態を招くことがないよう、信頼の醸成が欠かせない。対話のチャンネルを増やすことが大切だ。
中国は新型コロナウイルスに関してロックダウン(都市封鎖)を含む厳しい対策を優先し、生産や消費が低迷した。景気回復は重要な課題だが、債務膨張を警戒して大規模な対策には慎重なようだ。
日中は安保面で対立する一方、経済的なつながりが太い。新型コロナ禍で滞った経済活動の本格再開への期待が、対立の緩衝材となる側面がある。習氏は、両国が地域の共通利益に目を向けて自主的な立場で善隣関係を結ぶ必要性を指摘した。
重要なことだ。ただ、新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」を主導する米国への警戒感がにじむ。連携する日本へのけん制でもあるだろう。
各国は感染症流行や有事でサプライチェーン(供給網)が途絶する事態に備えて、経済安全保障を強化している。ロシアのウクライナ侵攻や中国の覇権拡大で国際秩序が混迷したことが後押しした。中国のロシア擁護に批判が向けられる。
中国は大国としての役割が求められる。混乱を招くような対応では国際社会からの信頼は遠のく。