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2022.11.18 08:00

【東京五輪汚職】組織委の問題を検証せよ

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 東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件の捜査が一区切り付いた。
 大会組織委員会元理事の高橋治之被告は、スポンサー選定の便宜を図った見返りなどで5ルートから計2億円近い賄賂を受け取ったとされ、4回起訴された。贈賄側の企業を含めると計15人が立件された。
 高橋被告は起訴内容を否認しており、刑事責任の有無は今後の裁判に委ねられる。
 ただ、五輪には巨大利権があり、それを巡って企業がうごめいたり、仲介したりする存在がいることをさらした。高橋被告に、「みなし公務員」である理事として不適切だと疑われる行為があったのも事実だ。
 スポーツの祭典を汚し、開催国のイメージを悪化させ、出場選手やファンを失望させた。贈賄側の被告も含めて、その責任は重い。
 一連の事件は、五輪の商業主義が強まる中で起きたと言えよう。開催には、協賛金集めやスポンサー対応の重要性が増している。必然的にノウハウのある組織が重用され、そこに権力者がいれば恣意(しい)的な運用も起こりかねない。
 今回の場合、「ノウハウのある組織」が広告大手の電通であり、「権力者」が元同社専務でスポーツビジネスの第一人者と言われる高橋被告だった。
 組織委は、スポンサー選定業務などを担う専任代理店として電通と契約。組織委の担当部署にも多くの同社社員が出向していた。そうした構図の中で、高橋被告は贈賄企業側の希望を聞き、古巣の社員たちに影響力を及ぼしていたという。
 スポンサー選定は実質的に「電通任せ」であり、業務はブラックボックスとされ、不透明な手続きの温床となった。こうした態勢を放置した組織委の責任も極めて重大だ。
 一連の事件に関して東京地検特捜部は、組織委会長だった森喜朗元首相、副会長だった日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和前会長からも聴取している。2人は高橋被告と親しかったといい、贈賄側の役員との会食にも参加していた。関与などを確認したとみられる。
 立件はされなかったが、「電通任せ」の組織運営も含めて、2人の道義的な責任は免れまい。
 高橋被告をなぜ理事にしたのか。どのような仕事を考えていたのか。組織委に主体性があったのか。組織委には問題を検証し、説明責任を果たす義務もある。解散したからできないというのは通じない。
 札幌市が2030年冬季五輪の招致を目指しているが、東京五輪汚職の原因が分からないままでは国民の支持は得られまい。招致できたとしても、新たに設ける組織委は迷走するのではないか。
 JOCや東京都は今回の事件を機に、国際大会の運営に関して不正防止のための組織を設けるとする。その前に過去を振り返るべきだ。
 一連の事件は、「商業五輪」の弊害とも言える。五輪や大規模な国際大会がこのままでよいのか、世界に一石を投じる必要もあろう。

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