2022.11.17 08:00
【ポーランド着弾】冷静に紛争の拡大を防げ
ミサイルがウクライナに隣接するポーランド東部のプシェボドフに着弾し、死者が出た。ロシアのウクライナ侵攻後、北大西洋条約機構(NATO)の加盟国に着弾したのは初めてのことだ。緊張感が一気に高まった。
NATO条約5条は、加盟国への攻撃を全加盟国への攻撃と見なし、武力攻撃を含む必要な措置を取ると規定する。ロシアとNATOが交戦する事態となれば、欧州を広く巻き込み、世界大戦へとつながる恐れがある。ポーランドは軍の臨戦態勢を強化する決定をした。
ウクライナ側からの迎撃ミサイルの可能性も指摘される。バイデン米大統領は、「軌道を考慮すると、ロシアから発射された可能性は低い」と述べている。ロシア国防省は、いかなる攻撃も行っていないと否定した。詳しい状況は不明だが、それだけに摩擦を強めないよう慎重な対応が求められる。
先進7カ国(G7)とNATOは緊急首脳会合を開き、調査の進展を注視し緊密に連携することで一致した。一方、バイデン氏はNATO加盟国への防衛義務を果たす意向を表明した。NATOが集団的自衛権を巡り、より実務的な議論をするようになれば、ロシアとの不和はさらに深まる。新たな紛争を回避する取り組みを強化することが重要だ。
NATOや欧州連合(EU)はウクライナに軍事支援を行ってきた。ロシアの国際秩序を揺さぶる行動を受けて、武器の非供与や中立の原則を転換する国もあった。ウクライナ軍は地域の奪還を進める一方、ロシア軍は全土に大規模なミサイル攻撃を仕掛けている。
ウクライナでは電力施設などの損壊が相次ぎ、人的被害も絶えない。国境付近での誤爆などが想定され、それをきっかけに加盟国を巻き込んだ紛争へと発展することが懸念されている。小さな出来事でも重大な結果を招きかねない。それを強く意識させる着弾だ。
ロシアにしても、そうした事態は回避したいのが本音ではないか。だが、ポーランドに着弾した日も、ロシアはウクライナ全土をミサイルで攻撃したようだ。ロシアがまず攻撃を停止することが重要だ。
国連総会は、ウクライナ侵攻による賠償をロシアに要求する決議案を賛成多数で採択した。法的拘束力はないが、国際社会の強い思いはロシアへの圧力となるはずだ。
ただ、反対14カ国のほか棄権は73カ国に上った。侵攻や4州の一方的な併合への批判がある一方で、対ロ関係をにらんだ各国の思惑が浮き彫りになった。一枚岩での対応は簡単ではない。
今回の着弾の衝撃は、侵攻を早期に決着させる重要性を強く訴える。調査の本格化と同時に、緊張を高めない対応が必要だ。たゆまぬ外交努力が求められる。