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2022.11.16 08:00

【米中首脳会談】対話継続で衝突回避せよ

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 過去最悪の関係とも指摘される米中の首脳がインドネシアで会談した。バイデン米大統領の就任以降、中国の習近平国家主席とはオンラインなどで5回対話しているが、対面での会談は初めてとなる。
 両大国の関係悪化の歯止めとなるかが注目されたが、腹の探り合いで終始したのは残念だ。中国が「核心的利益」と最重要視する台湾海峡問題が絡むだけに、やはり解決は容易ではない。
 両国が現状の危うさを認識し、軍事衝突回避のために意思疎通を強化することで一致しただけでも成果といえる。対話を継続して実効性の上がる枠組みとする必要がある。
 米バイデン政権は、対中政策ではトランプ前政権から強硬姿勢を引き継ぎ、中国包囲網を意識した通商政策を展開してきた。半導体の輸出規制強化など、戦略物資の脱中国化を加速させている。
 その緊張を一段と高めたのが、ことし8月のペロシ米下院議長の台湾訪問だった。反発した中国は台湾を取り囲む形で大規模な軍事演習を実施。さらに対抗措置として気候変動問題の協議のほか、海上安全保障などに関する対話も一方的に打ち切っていた。20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の機会を利用し、会談が実現したのは両国首脳が現状の危険性を認識したからだろう。
 両国間には人権問題や貿易摩擦、北朝鮮の核・ミサイル開発など多くの懸案が横たわるが、最大の焦点は台湾問題にほかなるまい。軍事大国同士の衝突となれば大きな被害が懸念され、ロシアのウクライナ侵攻で浮き彫りになった国際社会の分断もさらに広がりかねない。
 会談では、バイデン氏が台湾への威圧的な行為に反対を表明。習氏は台湾問題そのものを米中関係で「越えてはならない最重要のレッドライン」と位置付け、強くけん制した。原則論を主張し合った格好だ。
 ただ、双方とも対立の激化から衝突に至るシナリオは望んでいまい。米国はウクライナ支援との両面作戦を強いられ、中国はゼロコロナ政策で傷ついた経済がさらに悪化し、国際社会で孤立する恐れがある。いずれにとっても、競争に伴うリスクを管理することが重要となる。
 会談で、両首脳は衝突回避に向けた意思疎通を維持して、高官協議を強化することで一致。ブリンケン国務長官の訪中で合意した。
 バイデン政権は与党の民主党が中間選挙の上院で勝利し、習氏は長期支配体制を固めた。腰を据えて両国の課題を話し合う環境は整ったといえる。大国の指導者として両氏とも、国際社会の安定に対する責任を果たさなければならない。
 日本も、8月の中国による台湾周辺の軍事演習で排他的経済水域(EEZ)内に中国の弾道ミサイルが落下し、台湾問題が対岸の火事ではないことを思い知らされた。岸田文雄首相は17日、習氏と会談する見通しだ。日中の安定的な関係構築に加え、地域の緊張緩和に向けて主導的な役割が求められる。

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