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2022.11.15 08:00

【日韓首脳会談】意思疎通をより緊密に

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 東アジアの安全保障環境が悪化する中、日本と韓国の冷え込んだ関係を修復する意味合いは大きい。意思疎通を緊密にすることが関係改善の基本となる。地域の安定へ連携を強化する必要がある。
 岸田文雄首相は韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領と会談した。日韓首脳の正式会談は約3年ぶりとなる。非公式での対面はあったとはいえ、この「遠さ」が戦後最悪とされる日韓関係の現状を示している。
 最大の懸案は元徴用工訴訟問題だ。敗訴した日本企業の資産売却手続きが完了すれば関係の一段の悪化は避けられない。資産の現金化の前に、両首脳が早期解決を図ることで一致したことは前進ではある。
 この問題に関して、日本は1965年の日韓請求権協定で決着済みとの立場を取り、韓国側に責任ある対応を求めてきた。尹政権は前政権の姿勢を転換して対日関係の改善に意欲を示す。日韓両政府は賠償金を韓国の財団に肩代わりさせる案を軸に協議が本格化している。
 協議は年内決着を目指す構えとされる。だが、韓国には日本企業による資金拠出や謝罪を求める声は根強い。丁寧に意見集約を図らなければ、政権批判が強まることが想定される。日本も安易な妥協と受け止められるような解決の在り方では反発が強まりかねない。
 日本政府は韓国を重要な隣国と位置付ける。尹氏は日本を「共に力を合わせて進むべき隣人」と、以前の演説で表現した。会談では、関係改善を見据えて、首脳間でも意思疎通を継続することを確認した。
 バイデン米政権は中国を「最も重大な戦略的競争相手」と位置付ける。このため、日韓の不和が対中包囲網に影響することを危惧しているとの見方もある。日韓への圧力ともなるだろうが、ともかく関係修復が迫られていることは間違いない。
 それには対話を重ねることだ。首脳のシャトル外交復活への取り組みを期待したい。これまでの動きが示すように歴史問題の溝を埋めるのは難しいが、懸案を早期解決して新たな関係の構築が求められる。
 北朝鮮は異例のペースで弾道ミサイルを発射している。7回目の核実験も取りざたされる。会談では、米国を交えた3カ国の安保協力と抑止力強化でも合意した。
 日米韓3カ国の首脳会談では、バイデン大統領は日韓に対して核兵器を含めた米国の拡大抑止を強化すると表明した。また、共同声明は台湾海峡での平和と安全維持を掲げ、対北朝鮮での連携にとどまらない動きを見せている。
 日米首脳会談では、抑止力や対処力を一層強化することで合意した。首相は防衛力を抜本的に強化し予算を増額する決意を改めて伝えた。
 安保環境が厳しくなる中、防衛力への関心は高まる。しかし、精緻な積み上げや議論を欠いたままでは目指す防衛の姿が定まらず、のしかかる財政負担から継続性も揺らいでしまう。軍拡競争も加速させかねない。前のめりの姿勢ではだめだ。

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