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2022.11.10 05:00

【介護保険見直し】地方の人材難も深刻だ

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 3年に1度行われる介護保険制度の見直し作業が本格化した。厚生労働省の審議会で、2024年度の制度改正に向けて議論が始まった。高齢化で増え続ける介護サービス費用をどう賄うかが、主要な焦点だ。
 保険料を上げて介護保険財政が一時的に均衡しても、費用増はまだ十数年は確実に続く。介護人材不足も深刻化しており、制度自体に限界もちらついている。目先の保険財政改革にとどめず、制度の将来を広い視点で議論する必要がある。
 介護保険は、要介護認定を受けた人が1~3割の負担でサービスを利用できる。費用は保険料と利用者の自己負担、公費で賄われる。
 00年の制度開始以来、サービス利用者は増え続け、22年度の介護費用(予算ベース)は、00年度の約3・7倍の13兆3千億円に膨らんだ。
 それに伴い保険料も上がり続け、65歳以上の全国平均は00年度が2911円だったのに対し、現在は6014円に倍増。高知県平均も3124円から5814円となった。
 保険財政の収支均衡へ、厚労省は今回、所得が高い人の保険料の引き上げや、自己負担が2割になる対象の拡大、ケアプラン作成の有料化などを具体的に検討する。保険料上げは、年320万円以上の所得層のうち一定水準の人を対象とし、低所得者の保険料は引き下げる。
 上がり続けてきた保険料に、これ以上の負担増は厳しいとする人も少なくないだろう。設定に当たっては、被保険者の生活実態や負担能力をしっかり見極め、きめ細かく対応することが欠かせない。
 給付費を抑えるためのサービス見直しが行きすぎたり、自己負担の引き上げで利用控えを招いたりすれば本末転倒だ。さまざまな見直し作業の中でも、「社会全体で介護を支える」とする制度の理念は一貫していなければなるまい。
 放置してはいけないのが、担い手の問題だ。業界の人手不足は慢性的で、高齢者人口がピークになる40年度には全国で介護職員が69万人不足するとも指摘されている。
 働き手の少ない地方ほど状況は深刻だ。本県の土佐清水市などではケアマネジャーが不足し、利用者がケアプランを自己作成するケースが増えている。保険料を払った利用者がサービスを受けられず「介護難民」になる状況は、制度が行き詰まっているといってもよい。こうした地域の増加が見通されており、抜本的な担い手対策が求められる。
 介護保険を含めて、社会保障制度全般が少子高齢化の影響を受けている。医療制度も10月から、一定の収入がある75歳以上の窓口負担が2割に上げられ、新たに医療保険料を引き上げる見直し案も示された。
 政府は「全世代で公平に支え合う仕組み」として「全世代型社会保障」を掲げる。現役世代に偏った負担では、制度の持続可能性が厳しいのは事実だろう。世代間の公平に配慮し、将来像について開かれた議論を重ね、より大勢の納得を追求していくほかない。

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