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2022.11.03 08:00

【桜井監督龍馬賞】高知国体からつながった

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 世界の舞台で活躍するトップアスリートをなかなか輩出できない高知県のような地方でも、そうした選手を育てられることを証明した。指導手法や哲学は、大いに参考にできるところがあるのではないか。
 今年の「龍馬賞」に、高知南高レスリング部監督の桜井優史さんが選ばれた。
 レスリング世界選手権で2連覇を果たした長女の桜井つぐみ選手ら、有望選手を育成。教え子たちが国内外の大きな大会で次々と好成績を残している。地元選手が活躍すれば、県民はうれしく、誇らしいものだ。競技指導者の龍馬賞は珍しいだろうが、それに値する功績だ。
 レスリング選手だった桜井さんは1998年、4年後の高知国体を見据えて本県の教員になった。国体出場(準優勝)を経て2004年、ジュニア世代を育成するためのレスリングクラブを立ち上げた。
 練習はほぼ毎日行われた。1人で指導する孤独感もあったという。それでも「諦めないこと」「個性を尊重すること」を重視しながら、熱心に指導を続けた。地道な積み重ねが今、結実し始めている。
 その取り組みから浮き彫りになるのは、幼少時から継続的に練習する重要性だ。桜井さんが学校の部活指導にとどまらなかったのは、子どものころの競技経験が最後は決定的な差になることを痛感していたためだという。
 いま活躍する県出身アスリートの多くも、似たような境遇で台頭してきた。
 東京五輪に県出身者で唯一出場した飛び込みの宮本葉月さんは、高知国体に向けた強化のため他県から招いた瓶子勇治郎・高知スイミングクラブコーチの力が大きかった。同コーチにジュニア時代から指導を受けた選手の好成績が続いている。
 今年のインターハイで好成績を収めた高知東高校の水球も、高知国体を機に県外から来た同校監督の徳田毅さんが、地道にジュニア世代から練習環境を整えてきた。
 その意味では、今の県出身アスリートの活躍は、20年前の高知国体でまかれた種が花を開いた結果だとも言い換えることができよう。
 一方、それらは指導者個人の熱意に支えられているのが現実だ。
 都市部にあるような、素質のある子どもを選抜指導する団体やシステムに乏しい本県ではやむを得ないかもしれないが、県内の競技力向上を目指していく上で、それが当たり前になってはいくまい。
 県などはこうした指導者をサポートするとともに、新たな指導者の育成や他の競技団体のノウハウ向上などにつなげてもらいたい。
 高知国体の「遺産」が現在に残っている一方で、人口減少や過疎のうねりにより当時の競技熱が失われているケースも少なくない。
 競技性にこだわらなくても、スポーツへの参加は生活の豊かさや健康につながる。一線で活躍する指導者やアスリートは、引き続きスポーツの魅力を発信してもらいたい。

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