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2022.10.28 08:00

【県内談合疑惑】防止策は機能したのか

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 高知県発注の地質調査業務の入札で長年、談合が繰り返されてきた疑いが浮上した。公正取引委員会が独禁法違反(不当な取引制限)容疑で、県内の測量会社や建設コンサルタント会社など十数社を立ち入り検査した。
 各社は10年以上前から、県発注の道路や河川の改修工事などに関する地質調査業務の指名競争入札で、受注業者や入札金額を調整していた疑いがあるという。
 公取委の検査は一般的に1年程度かかるとされ、最終的に談合が認定されるかどうかは分からない。
 だが、公正な価格形成をゆがめ、税金の無駄遣いにもなる談合行為の疑いを持たれたことだけでも、業界や公共事業に対する県民の不信感を膨らませる。検査対象となった事業者は、極めて重く受け止める必要がある。
 今回見過ごすことができないのは、談合があったと疑われている時期が、地質調査業を含む県内の建設関連業界が、コンプライアンス(法令順守)確立の取り組みに躍起になっていた期間と重なることだ。
 公共事業への依存度が高く、関連業者も多い高知県では過去、業者の共存共栄のためとして、談合を「必要悪」としてきた風土があったことは否めまい。その体質に2011年、大きなメスが入った。
 公取委は同年12月、国や県発注工事を巡る談合疑惑で、県内三十数社などに立ち入り検査に入った。大がかりな一斉検査という形は、今回の地質調査業務と重なる。
 翌年10月、公取委は、国土交通省職員による情報漏えいもあった官製談合と認定。県内大手など37社に総額約17億5千万円の課徴金納付と排除措置を命じた。
 事件は県内政財界を大きく揺るがし、これを機に、業界はコンプライアンスの徹底へ取り組みを強化。県も談合防止対策を見直し、現在も続く業界向けコンプライアンス研修などが行われるようになった。
 それだけに、今回もし違法行為が認定されたとすれば、地質調査業界は裏では組織ぐるみで取り組みに逆行していたことになる。単なる法令違反にとどまらない悪質さがあると言わねばならない。
 10年前の建設談合事件を巡っては、県は、地域経済への打撃を考慮し、関わった業者の指名停止処分の期間を短縮した。ペナルティーを軽くしても再発防止態勢は築けると説明した。
 一方で、処分の軽減が談合の土壌を残すのではないかという反対論も強かった。その懸念が現実になった側面はないと言えるのだろうか。
 地質調査業を手掛ける県内企業は十数社で、県の年間発注額は10億円ほどとされる。10年前の建設談合事件ほど県経済への影響はないが、疑惑の段階とはいえ、談合体質が根強く残っていることを示した。
 10年前の事件を教訓に、業界や県が行ってきたコンプライアンスに関する取り組みは機能していたのか。検証する必要がある。

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