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2022.10.25 08:43

貴重な昆虫標本を〝救助〟 越知町・横倉山博物館が引き受け 収集家夫妻は「努力報われる」

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運び出される県内の昆虫標本(写真はいずれも高知市高須東町)

運び出される県内の昆虫標本(写真はいずれも高知市高須東町)

 高知市の昆虫研究家、宮田隆輔さん(83)、俊江さん(83)夫妻が50年間にわたって県内で採集してきた微小昆虫などの標本約1万点が、横倉山自然の森博物館(高岡郡越知町)にこのほど寄託された。高齢となり管理が難しくなった夫妻の希望に応じて、同博物館が貴重な県内の生物記録を救助した。

半世紀にわたり標本を集めてきた宮田隆輔さん、俊江さん夫妻

半世紀にわたり標本を集めてきた宮田隆輔さん、俊江さん夫妻

 夫妻は30歳ごろから趣味で調査を始めた。2006年には国立科学博物館(科博)の専門家と連名で、県内で確認されたアリヅカムシ115種3亜種を発表。これによって本県は全国トップの確認数となっている。

 標本は高く評価され、約5600点は科博に寄贈。県外の別の研究機関からも引き取りたい旨の申し出があったが、夫妻は「地元の高知にコレクションがなくなってしまう」と危惧。生物標本の保存・管理体制をつくろうと活動している横倉山博物館の谷地森秀二学芸員に相談すると、横倉山の総合調査で採集した甲虫が含まれていることなどから寄託が決まった。

 10月22日、谷地森さんや高知大学生らが宮田さん方を訪問。ハネカクシやカミキリムシの仲間の標本が入った約70箱を運び出した。

 俊江さんは「体がついてこないけど、本当はまだやりたい」とにっこり。隆輔さんは「図鑑にない、標本もない、という状態で調査して集めた。活用してもらえれば努力が報われる」。この日のために標本の整理に打ち込んできた2人は「なんとか間に合った。ほっとしている」と口をそろえた。

 県内の生物標本は、昨年の「こうちミュージアムネットワーク」による調査で危機的状況が明らかになっている。10年以内に7万点以上が散逸や県外に流出する恐れがあり、宮田夫妻の標本もその一例だった。

 こうした状況に、県は今後5年程度で廃校など既存施設を利用して収蔵場所を構える方針。河野和弘・自然共生課長は「現在、保存する標本の基準を検討中だ。2027年度から受け入れられるよう進めたい」としている。(八田大輔)

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