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2022.10.18 08:00

【旧文通費見直し】うやむやは許されない

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 政治課題に浮上して間もなく1年がたつ。国会議員の「特権」として国民感覚とのずれが批判される宿題をうやむやにするようなら、国民の政治不信はなお深まろう。
 国会議員に月額100万円が支給されている「調査研究広報滞在費」(調査研究費=旧・文書通信交通滞在費)の使途公開や、未使用分の国庫返納といった本質的な改革論議が聞こえてこない。
 今臨時国会は、物価高や新型コロナウイルスの対策に加え、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)側と政治の関係や、安倍晋三元首相の国葬の検証など論点が山積している。
 ただ、調査研究費についても、先の通常国会で自民党側も参院選後に再協議する考えを示したはずだ。それを忘れてはならない。
 見直し論議は、昨年10月31日投開票の衆院選が発端だった。初当選した日本維新の会の新人議員が、当選が決まったのは11月1日未明なのに10月分100万円が満額支給されたのはおかしい、と提起した。
 昨年12月の臨時国会では見直しが進まなかった。ことし4月の通常国会で、各党はようやく日割り支給への変更と名称変更に関する法改正に至った。
 この際、各党は「公の書類発送、通信のため」としていた支給目的の規定を「調査研究、広報、国民との交流、滞在などのため」と広げている。その一方で、使途の透明性確保や、使わなかった分の返納に関しては棚上げされたままになった。
 使途の公開には、自民党を中心に根強い消極論があるとされる。
 調査研究費は、改称以前から国会議員の「第2の給与」と呼ばれる。非課税の上、領収書も返還も必要ないため、事務所費や秘書給与のほか、自民党若手議員の「子どもの教育費」などに充てているという証言も報じられた。
 加えて支給目的の拡大に関しては、「国民との交流」だとして選挙活動に使えると拡大解釈されかねないという懸念も出ている。
 議員に都合の良い部分のみの見直しでは、露骨な「お手盛り」である。「政治とカネ」の問題には国民の厳しい視線が向いている。何にどれだけ使われているのか。チェックすることができないブラックボックスのような政治資金の仕組みのままでは、国民の理解は得られまい。
 共同通信の4月の世論調査では、「使途を公開すべきだ」との回答が88%に上った。物価高騰にあえぐ国民の「議員特権」に対する目はより厳しくなっていよう。
 臨時国会を前に、立憲民主党と日本維新の会は調査研究費の使途公開を含む6項目で共闘に合意した。自民党にも真摯(しんし)な議論を期待する。まさか、国民はすぐに忘れると考えているわけではあるまい。
 旧統一教会や国葬への対応を背景に内閣支持率が続落する岸田文雄首相は、指導力が問われている面もあるようだ。「信頼と共感の政治」を掲げるのであれば、調査研究費問題でも指導力を発揮すべきである。

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