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2022.10.14 08:00

【マイナ保険証】強制より丁寧な説明から

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 行政のデジタル化は効率化や利便性の向上が期待される。一方で個人情報が適切に扱われるのか危惧する声も根強い。そうした不安としっかり向き合い、丁寧な説明を重ねることが不可欠だ。
 政府は、現行の健康保険証を2024年秋に原則廃止し、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」に切り替えると発表した。これまで時期を示していなかった。
 マイナンバーカードの取得は任意となっている。しかし、現行保険証が廃止されれば、カード取得は実質的な義務化を意味する。
 運転免許証の機能をカードに追加する時期も、予定する24年度末からの前倒しを検討するという。カード普及へ本腰を入れる構えだ。
 マイナ保険証は昨年秋に本格的な運用が始まった。医師らが患者の同意の下、薬の処方歴や特定健診の結果を見て治療に生かすことが期待される。河野太郎デジタル相は、就職や離職で保険証を切り替える必要がなくなるなど利便性を挙げた。
 ただ、これまではマイナ保険証を使える医療機関などが広まらず、カードを取得した人でも保険証として登録している人は4割ほどという。そもそも、カードの普及率が9月末時点で人口の半数弱にとどまる。
 政府は22年度末までにほぼ全ての国民への交付を目指している。普及促進へ、取得者に買い物などに使えるポイントを付与する事業も行っているが、厳しい状況にある。
 取得が伸びないのは、必要性を感じないことのほか、個人情報を把握されることへの抵抗、情報流出への懸念があるためだ。制度の浸透には不安の解消が肝要となる。
 マイナ保険証への一体化には、医療情報の管理態勢などへの懸念を取り除かなければならない。カードを持ちたくない人が医療を受けられない状況になるようでは大問題だ。
 河野氏の突破力で事態を動かしたいという狙いがうかがえる。だが、強引な取り組みはかえって混乱を招きかねない。カードの取得や一体化への理解を深めるためには十分な説明が基本だ。デジタルになじみの薄い高齢者らを取りこぼさない態勢を築くことも欠かせない。
 期限の設定で意気込みを示したいのだろうが、着実な姿勢こそが重要だ。勢いだけで進めようとすれば自治体の業務が滞りかねない。それは新型コロナウイルス対応でも見られたことだ。そもそもカード自体を拒んでいる人がいることを受け止めた対応が求められる。
 新型コロナの感染拡大は、日本社会のデジタル対応の遅れをさらけ出した。給付金や助成金のオンライン申請はトラブルが続出し、支給に手間取った。煩雑な事務が現場にのしかかり、その負担は業務の足かせになった。利便性や効率化が求められることは間違いない。
 ならばなおさら、前のめりは排除した対応が必要となる。セキュリティーやプライバシー保護の対策は万全と周知されなければ説得力は生まれてこない。

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