2024年 03月29日(金)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知龍馬マラソン2024写真販売
高知新聞PLUSの活用法

2022.10.08 05:00

【ノーベル平和賞】強権体制への強い抗議だ

SHARE

 注目されたノーベル平和賞はやはり、ロシアによるウクライナ侵攻を意識したものになった。
 ノルウェーのノーベル賞委員会はことしの平和賞を、ベラルーシの人権活動家アレシ・ビャリャツキ氏とロシアの人権団体「メモリアル」、ウクライナの人権団体「市民自由センター」(CCL)の1個人2団体に授与すると発表した。
 隣国同士の3カ国にまたがっているが、市民の人権を守るため、それぞれの国で長年にわたって戦争や権力の乱用などを監視し、抵抗してきた民間の個人や団体である。ノーベル賞委員会は「人権や民主主義、平和共存の傑出した擁護者」と説明している。
 為政者は時に批判的な市民を弾圧することがある。都合の悪い事実を隠そうとする。授賞には市民による権力監視の重要性に改めて焦点を当て、そうした活動を支えていこうとのメッセージが読み取れる。
 ビャリャツキ氏は旧ソ連の構成国の一つであるベラルーシで、民主化運動を展開。政治囚の拷問などにも抗議を続けてきた。
 ベラルーシではソ連崩壊後の1994年から、ルカシェンコ大統領が28年にわたって統治している。その間、憲法改正で大統領の権限が強化され、「欧州最後の独裁者」とも呼ばれる。
 前回2020年の大統領選挙ではルカシェンコ氏側の不正が疑われ、大規模な抗議デモに発展。当局が参加市民を無差別に弾圧し、ビャリャツキ氏も逮捕され、現在も拘束されたままという。ルカシェンコ氏の独裁ぶりを象徴している。
 メモリアルはソ連時代の政治抑圧を記録してきた団体だ。
 ロシアを代表する人権団体として知られ、1987年に前身組織が創設された。水爆の開発に携わった物理学者ながら、後に軍縮と人権擁護活動に取り組み、75年にノーベル平和賞を受賞した故アンドレイ・サハロフ博士も参加していた。
 チェチェン紛争ではロシア軍などの民間人虐待も調査してきた。しかし、プーチン政権がスパイを意味する「外国の代理人」に指定し、ことし4月に解散させた。
 CCLは2007年、ウクライナ国民の人権を守り、民主主義をより進歩させるために設立された。ロシアがウクライナに侵攻したことし2月以降は、ロシア軍による民間人虐殺など戦争犯罪の記録に取り組んでいる。
 こうして見てみると、ことしの平和賞には強権的なロシアのプーチン大統領への強い抗議が込められている。ロシアのウクライナ侵攻を後方支援するベラルーシのルカシェンコ大統領への圧力にもなろう。
 世界ではいま、ロシアや中国の動きもあって、統治の良識や平和の秩序がゆがみつつある。特に戦争という最大の人権侵害が進むウクライナの状況は放置できない。
 国際社会の一層の連帯や支援が求められる。ことしの平和賞が問い掛けるものは大きい。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月