2022.10.01 08:45
食品値上げの秋、始まる...高知県民直撃「給料上がらんのに」酒買いだめに走る姿も
10月からの値上げを前に、酒類などをまとめ買いする客(高知市南御座のリカオー御座店)
「きょうは朝から大量買いよ!」
30日午後3時前。リカオー御座店(高知市南御座)に、電気工事会社を営む男性(59)が入ってきた。カートにビールや茶を山積みして、通路を行ったり来たり。
「あったらあっただけ飲んでしまうんやけど」と笑いつつ、「値上げは仕方ない。安いうちに買えるだけ買う」。この日のうちに数店回る予定だという。
桜井貴之店長(44)によると、「9月中旬の連休あたりから〝爆買い〟する客が目立ってきた」。24本入りのビールを1人で30ケース買った人もいたという。
店も駆け込みがあると見込み、酒などを大量に仕入れている。「あと1カ月は値上げせずにいけそうだけど…。いよいよ波が来たな、という感じ」
帝国データバンクが9月1日に公表した調査では、ウクライナ情勢や円安の影響によって、年内に値上げが見込まれる食品は実に約2万品目に及ぶ。
10月からはこのうち3割超の6532品目が一斉に上がる見込み。これは8月に値上げされた2493品目を大きく上回る。
種類別では、2835品目を占める酒類・飲料が平均15%の値上げとなり、缶詰やソーセージなどの加工食品が17%、調味料が18%など。同社は「各酒メーカーが需要が増える夏場を避けたため、10月に集中した」と分析する。
県内スーパーの担当者によると、9月27日ごろからビールや缶酎ハイなど、買いだめが利く商品が売れ出した。29日の酒類の売り上げは昨年の1・3倍に増えたという。
毎日屋大橋通り店(高知市帯屋町2丁目)にいた美容サロン勤務の女性(33)は「何でも値上がりすると生活が厳しい」とため息。新型コロナウイルス下で、サロンの売り上げは一時激減していた。「最近、やっと給料が戻ったところに値上げ。なかなか元の生活に戻れない」と嘆いた。
今年の食品値上げによって、2人以上の世帯では年間平均6万8760円の支出増になる、という試算もある。
同店から買い物袋を提げて出てきた女性(65)は今春、会社勤めを終えて年金生活に。「買い込んでも使い切れないから」と買い物の量は変わらない。ただ、4月に小麦が上がってからパン屋への足は遠のいたという。
「年金も思ったほどもらえないし、介護保険の負担もきつい。どんどん生活に余裕がなくなっていく」とぼやいた。
高知市の帯屋町商店街で買い物をしていた高知工科大学の男子学生(20)は、スーパーで飲料水が品薄になっていたことに驚いた。今は実家暮らしだが、卒業後は県外就職を希望している。「このまま値上がりが続いたら不安ですね」と漏らした。
帝国データバンクの予想では、値上げされる食品は11月の458品目でひとまず落ち着く見通し。「ただ、今春以降は値上げの間隔が短くなっている。断続的な値上げが続く可能性も十分ある」と本紙取材に付け加えた。
電気料金が上がり、ガソリン代も高止まりする中、ピークを迎えた食品の高騰。県民の財布を直撃しそうだ。(報道部取材班)