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高知新聞PLUSの活用法

2022.09.24 08:00

【増える空き家】所有者も向き合おう

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 空き家問題が全国的に深刻化している。とりわけ本県は、空き家率が全国で最も高く、倒壊の恐れや景観、衛生環境の悪化などが懸念されている。
 家屋は、長く放置されるほどに次の用途の選択肢が狭まり、コストや手続きの面から解決が難しくなる。先手先手の対応が肝要だ。行政は所有者への働き掛けを強め、所有者も日ごろから「家の今後」に向き合う機会を持ちたい。
 空き家が増える背景には高齢化と人口減少がある。総務省の調査では売却や賃貸など目的のない家は2018年時点で348万戸で、5年で約30万戸増えた。本県は年2千戸のペースで増え続け、18年の空き家率は12・8%。約39万戸のうち5万戸が空き家ということになる。
 適正管理されない空き家は、地震の際に避難路をふさぎ、台風時に屋根が飛ぶなど危険をもたらす。景観や衛生面でも周囲に迷惑をかけかねない。
 しかし、所有者が不明または多数だったり、解体費を払えなかったりすると放置される。また、「知らない人には貸したくない」「手続きが煩わしい」などの理由で、手放さない所有者も多いという。
 本県では13年度以降、老朽住宅を除去する場合や貸家用に改修する場合の補助制度を設け、市町村も「空き家バンク」で賃貸を仲介するなど対策が取られてきた。国も15年度、危険な空き家を対象に、市町村が撤去を助言・指導し、最終的に強制撤去できる特措法を施行した。
 これらの利用実績は年々、積み上がっている。だが空き家は増える一方だ。現状に対策が追いついていないということだ。
 空き家は移住の受け皿にもなる。しかし、県内で年2千戸ずつ出現しているにもかかわらず、貸家として使える物件は少なく、住宅を見つけられずに移住を諦めるケースが年約200件あるとされる。この点からも対策の必要性はある。
 県は今春から、対応を強化している。所有者向けに、活用例や判断材料などを示して今後を考えてもらう「決断シート」を作成。庁内には専門の対策チームを新設し、相談態勢や広報機能を拡充した。改修時の補助額なども手厚く変更している。
 これまでの「相談待ち」の姿勢から、一歩踏み込んだ格好だ。シートの先行導入県では成果も上がっているという。家は使わない期間が短いほど改修費が安く済み、利用価値も高い。所有者も、空き家は社会性のある問題として主体的に考えてもらいたい。
 空き家の出現数はこれからさらに増えると予想される。より抜本的な対応も求められる。
 日本では景気刺激の観点もあって、住宅ローン減税など新築重視の税制が続いてきた。家を解体するメリットは小さく、逆に、さら地にすると土地の固定資産税が上がってしまう。解体を誘導する税制優遇策を導入するなど、持ち家政策の見直しも検討していくべきではないか。

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